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1 売買申込証拠金は全額返還が原則

2015年10月21日 公開 / 2015年11月10日更新

テーマ:不動産法(売買編まとめ)

コラムカテゴリ:法律関連

 本日より,暫くの間,「実務に見られる不動産法(売買編)」と題して,新著発刊予定の原稿を載せてみたいと思います。
内容は,そのほとんどが,本連載コラムで紹介したものですが,簡潔に分かりやすく書き直しています。

第1部 売買契約の前段階

遠慮は損慮!あなたのお金です。堂々と“,不動産は買わないことにしたので,預けた証拠金はぜ~んがく,返してネ”と言える勇気を持たなくちゃ!

売買申込証拠金

1 売買申込証拠金は,全額返還が原則
 マンションや宅地の分譲の際,販売業者が,不動産の購入希望者から,売買契約の「申込証拠金」等の名目で金銭を受け取る場合がありますが,売買契約に至らなかった場合、これは原則として,全額を,業者から購入希望者に返還されるべきものとされています。

(1)申込証拠金の法的性格
 一般には、契約申込証拠金とは、「購入希望者が真実買主として売買契約を締結する意思があることを確認し、その証拠として売主たる分譲業者等に預託する金銭であって、その授受によって、その購入希望者の申込の優先順位は確保され、売主は一方的に契約の締結を拒否することはできず、契約締結時には手附金に充当し、契約が不成立の場合には売主は購入申込者に返還する義務があるもの」(商事法務研究会・不動産取引5頁)と理解されていますので,売買契約に至らない場合は,原則として,返還すべきものになるのです。
(2)通達
 昭48.2.26建設省計宅業発第16号の1建設省計画局不動産業室長通達は,「最近、業者が宅地又は建物の売買において、契約が成立しない時申込証拠金を顧客に返還しない  旨を表示する事例が見受けられ、その額も甚だしいものは10万円に達している。しかし、申込証拠金の額が申込の事務処理に通常必要とされる費用の額を大幅に上回って授受される場合は、宅地建物取引に関する著しく不当な行為にあたると思われるので、参考までに通知する。」との行政解釈をしているところです。
(3) 実費程度の控除は可能
 前記通達の趣旨から推して、申込証拠金の預入契約書に記載があれば,販売業者は,申込の事務処理に通常必要とされる費用の額として合理性ある一定限度額内での没収は可能とされています。

(4) 申込証拠金と手付の違い
申込証拠金は,売買契約締結前の段階で,預けるお金のことです。契約に至らない場合は,返還されるものであることは前述のとおりです。
手付金は,売買契約の成立の時に交付するお金のことです。
手付金には,常に①売買契約成立の証拠とする「証約手付」として性格を持ち,➁特約がなければ,併せて➁「解約手付」の性格を帯び,③特約によって「違約手付」にもなしうるものです。,

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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