債権法改正 契約上の地位の移転
(敷金)
第622条の2 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の
弁済に充てることを請求することができない。
【コメント】
現行法には,敷金と関する規定(民法316条及び619条2項)はないわけではない,しかし,その定義,敷金返還請求権発生の時期,被担保債権の範囲等重要な事項に関する規定は存在しない。そのため,賃貸借契約書の中に使われる「敷金」の解釈に関し疑義が生じた。そこで,改正法では,敷金に関して条文を新設したのである。
1項は,判例法理に従い,敷金の定義を明らかにした。括弧内の言葉が定義規定である。また,敷金返還請求権の発生時期及び被担保債権の範囲を明確にしたもの。
2項も,判例法理に従い,敷金返還請求権が発生する前であっても,賃貸人のみは,敷金を債権の弁済に充当できると定めたのである。