債権法改正 話し合い中でも,時効は完成するので,要注意,と援用権者
本コラムは,本年2月に公表された債権法改正要綱案を前提にしています。
要綱案は,その後,本年3月31日に債権法改正案になって国会に上程され,現在審議中です。
要綱案と改正案では,実質的な違いはありませんが,部分的には,用語や表現が違うところがあります。
いずれ,本コラムは,法律改正がなされた後で,正しい条文を紹介した上で,補足させていただく予定です。
それまでの間,要綱案の説明で,ご容赦ください。
第8 債権の目的(法定利率を除く。)
1 特定物の引渡しの場合の注意義務
民法第400条
債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
コメント
現行法は、単に「善良な管理者の注意をもって」と規定されているのを、改正法では、「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって」に改められたもの。
これで、債務の発生原因を問わず、債務者には善管注意義務があることとされたのである。
2 選択債権
民法第410条
債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。
コメント
「不能」概念の使い方1
現行法では、不能の給付の選択は認めないのが原則であるが、改正法は、不能の給付の選択を原則として認め、例外として、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときだけ、その不能の給付を選択できないものにした。この方が、紛争事案の柔軟な解決に資することになると考えられたもの。
なお,改正法では,「不能」概念が多く使われている。
不能だから無効という理解ではなくなったということである。
ここでも,不能の給付も選択できるという点で,従来の考えとは違った扱いになっているのである。