改正法の下では、特別損害の範囲が変わる 主観から客観へ
本コラムは,本年2月に公表された債権法改正要綱案を前提にしています。
要綱案は,その後,本年3月31日に債権法改正案になって国会に上程され,現在審議中です。
要綱案と改正案では,実質的な違いはありませんが,部分的には,用語や表現が違うところがあります。
いずれ,本コラムは,法律改正がなされた後で,正しい条文を紹介した上で,補足させていただく予定です。
それまでの間,要綱案の説明で,ご容赦ください。
Q 改正法民法93条(心裡留保)は,
(1) 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
(2) (1)ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
という規定であるが,
(1)の「相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたとき」という言葉の意味,と(2)の「善意の第三者」という場合の「善意」の意味を教えてほしい。また,「悪意又は重過失」という言葉が使われる場合もあるが,その意味を教えてほしい。
A 「知る」とは文字どおり「知る」ということで,法律上は「悪意」と同義語である。
「知ることができた」といういのは,「過失によって知らなかった」という意味であり,善意とは「知らなかった」という意味である。善意の中には,「過失によって知らなかった場合」もあれば,「過失なくして知らなかった場合」もある。
以上をまとめると,
悪意=知っていたこと
重過失=知らなかったが,重大な過失によって知らなかったこと
悪意又は重過失=知っていたか,知らなかったとしても重大な過失によって知らなかったのだから知っていたのと同じに扱うという意味になること
善意=知らなかったこと
知ることができた=知らなかったが,知らなかったことに過失があるという意味
善意無過失=知らなかったし,知らなかったことに過失はないこと
あてはめ
改正法民法93条(心裡留保)にあてはめると,
(1) 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知っていたとき又は過失によって知らなかったときは、その意思表示は、無効とする。(2) (1)ただし書の規定による意思表示の無効は、その意思表示が表意者の真意ではないことを知らなかった第三者ー仮に知らなかったことに過失があってもーに対抗することができない。