改正法の下では、特別損害の範囲が変わる 主観から客観へ
本コラムは,本年2月に公表された債権法改正要綱案を前提にしています。
要綱案は,その後,本年3月31日に債権法改正案になって国会に上程され,現在審議中です。
要綱案と改正案では,実質的な違いはありませんが,部分的には,用語や表現が違うところがあります。
いずれ,本コラムは,法律改正がなされた後で,正しい条文を紹介した上で,補足させていただく予定です。
それまでの間,要綱案の説明で,ご容赦ください。
(8) 協議による時効の完成猶予
ア 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
(ア) その合意があった時から1年を経過した時
(イ) その合意において当事者が協議を行う期間(1年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
(ウ) 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6箇月を経過した時
イ アの合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、ア、ウ及びエの規定を適用する。
ウ アの規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度のアの合意は、アの規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができない。
エ 催告によって時効の完成が猶予されている間にされたアの合意は、アの規定による時効の完成猶予の効力を有しない。アの規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
オ イの規定は、ア(ウ)の通知について準用する。
コメント
新設規定であるが、実務的には重要なもの
協議によって時効の完成を阻止ないし猶予しようとするもの。
これは、交通事故による損害賠償請求権の存否、内容などについて示談交渉をしている途中で時効が完成するおそれがある場合等に、この制度を利用すれば、時効を中断させるためだけに訴訟を提起する無駄をなくす意味がある。
協議を行う旨の合意は書面でしなければならないこと、協議期間を原則として1年と定めていること、再度の合意は認められるが、最大で5年を超えることはできないこととされているので、要注意
7 時効の援用
民法145条 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
コメント
ここで当事者とは、時効の援用権者をいうが、現行法では、その範囲が明確でなかったので、括弧内に当事者を例示したものであるが、時効援用権者とは、広く、権利の消滅について正当な利益を有する者になる。