債権法改正 話し合い中でも,時効は完成するので,要注意,と援用権者
本コラムは,本年2月に公表された債権法改正要綱案を前提にしています。
要綱案は,その後,本年3月31日に債権法改正案になって国会に上程され,現在審議中です。
要綱案と改正案では,実質的な違いはありませんが,部分的には,用語や表現が違うところがあります。
いずれ,本コラムは,法律改正がなされた後で,正しい条文を紹介した上で,補足させていただく予定です。
それまでの間,要綱案の説明で,ご容赦ください。
第5 無効及び取消し
1 法律行為が無効である場合又は取り消された場合の効果
民法○○条(新設)
(1) 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
(2) (1)にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に民法第121条本文の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
(3) (1)にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
コメント
無効の行為の結果は,法律効果が生じないのであるから,原状回復義務があるのは当然であり,原則であるが,無効であることを知らなかった者や意思能力のない者は,現存利益の限度で返還すればよいというもの。
2 追認の効果
民法122条のうち「ただし書」は無意味な規定である理由で削除されることになった。
3取り消すことができる行為の追認
民法124条
(1) 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
(2) 次のいずれかに該当するときは、(1)の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
ア 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
イ 制限行為能力者(成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
コメント
取り消しができる法律行為を追認するということは,取消権の放棄を意味するので,その法律行為が取り消しうるものであることを知った上でないとできないとする判例法理を明文化したもの