債権法改正 債務引受① 併存的債務引受
本コラムは,本年2月に公表された債権法改正要綱案を前提にしています。
要綱案は,その後,本年3月31日に債権法改正案になって国会に上程され,現在審議中です。
要綱案と改正案では,実質的な違いはありませんが,部分的には,用語や表現が違うところがあります。
いずれ,本コラムは,法律改正がなされた後で,正しい条文を紹介した上で,補足させていただく予定です。
それまでの間,要綱案の説明で,ご容赦ください。
第4 代理 1 代理行為の瑕疵-原則
民法第101条1項が次の2つになる。
(1) 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
(2) 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が、意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
コメント
(1) は代理人が意思表示をした場合で,(2)は代理人が意思表示を受けた場合の規定であるが,代理人の相手方になった者の意思表示の効果については,(1) が適用されることになる。
この規定は,現行法では疑義のあったところを明確にしたもの
2 代理行為の瑕疵-例外
民法第101条第2項
特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
コメント
現行法では「本人の指図に従ってその行為をしたとき」のみ適用があると読めるような規定であったので,その文言を削除し,判例法理を明文化したもの
3 代理人の行為能力
民法第102条
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。
コメント
この規定は,現行法の「代理人は,行為能力者であることを要しない。」という規定を改正したもの。しかし,現行法のこの規定で,行為無能力者の行為が有効になるとするのは,本人の保護にはならないので,制限行為能力者についてのみ規定した。これが本文である。しかし,その場合も,本人が制限行為能力者の場合は,代理人の行為を取り消しうるものとしないと本人の保護にならないので,「ただし書」を設けたのである。
民法105条は,代理人が復代理人を選任した場合の責任を定めた規定であるが,これは債務不履行の一般原則の中で解決を図るべきものとされ,削除されることになった。