使用者のための労働問題 就業規則を変更したときの附則の書き方
Q 当社は,当社を中心とするグループ内の会社の再編を行い,グループでしている全体の事業を,会社ごとに分けて実施していくことにしました。これにより,従業員を会社間で移動させなければならないことになりますが,その方法として出向や転籍を考えています。
これらは,簡単にできることですか?
A
1,出向
出向とは,従業員が現在勤務している会社(例えばA社)の従業員である身分を有したままで,他の会社(例えばB社)に出向き,B社の指揮監督を受けながらその会社の業務を行うことをいいますが,これは労働契約,就業規則,労働協約などにより明示的に出向を命ずることができる定めがあればできますが,それがない場合は,本人の同意を得なければできません(最高裁昭和48.10.19判決・福岡高裁平成12.11.28判決)。
なお,労働契約法14条は「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。」と規定していますので,出向を命ずることができる場合でも,必要を超えて出向させることは許されません。
2,転籍
転籍とは,A社との間の雇用契約を解除して,B社との間に雇用契約を結ぶことですので,従業員本人の同意が必要になります。「転籍を命ずることができる」との就業規則や労働協約があっても,本人の同意は必要とされています。東京地裁平成4.1.31判決は,就業規則の包括的な規定による転籍命令権は否定しています。