弁護士と格言 口論乙駁は,コンセンサスを求める場にふさわしからず
遺産分割は,結構もめやすい事件です。
①遺産分割の対象財産を確定して,➁その評価をし,③各相続人の具体的相続分を算出し,④具体的相続分に見合う財産をどう分けるかという道筋を追わないで,依頼者の感情や要求を,そのまま伝える弁護士が代理人を務める場合は,遺産分割がいたずらに紛糾し,解決までに時間がかかります。
しかし,この道筋を追いながら,事実と法律を整序できる弁護士は,その筋道を辿りながら,依頼者にも,筋道に沿った進め方で遺産分割をすることが最善の結果になることを説明しますので,遺産分割が,依頼者の納得のできる内容で,早期に実現できる場合が多いように思います。
事実と法律の整序ができない,あるいは,整序をしない弁護士が代理人になると,依頼者自身が,遺産分割に至る道筋を教えられないことになるので,それが遺産分割とは関係のない主張だということの自覚が持てないまま,自分の感情と要求を言うだけの,無理を言う当事者になってしまのです。
そのような依頼者に無理を言わすのは,弁護士の責任です。
一般の人は,知らないから無理を言っている場合があり,それが無理だと知ったときは,その無理を引っ込めるだけの常識を持っているのが普通です。
ですから,当事者が無理を言っているように見えても,それは依頼者が無理を言っているのではなく,弁護士が言わせていると考えるべきなのです。
弁護士は,常に,受任事件の解決を目指して,その結論に至る道筋を忘れず,順を追って事実を整序し,法律を整序し,それを依頼者に丁寧に説明していくことが求められているのです。