公用文用語 「等」と書くか「など」と書くか?
昨日のコラムの問題「お土産を頂く」か,「お土産をいただく」か?
の正解は,「お土産を頂く」です。
問題「参考にして頂く」か,「参考にしていただく」か?
の正解は,「参考にしていただく」です。
漢字と平仮名を分ける基準は,“動詞は漢字で,補助動詞は平仮名で書かねばならない”という原則です。
漢字は,前回のコラムに書いたように,固有の意味を持っています。
「頂く」という文字は,「もらう」(他に「食べる」「飲む」など)という意味の動詞の謙譲語ですから,「もらう」などの意味がある言葉なのです。「お土産を頂く」の「頂く」は,「お土産」という名詞に「を」という助詞を付けた後の「もらう」という意味の動詞であることは明らかです。
特定の意味を持たせる動詞は,漢字で書かなければ意味は生かせません。これは前回のコラムで明らかにしているところです。
ですから,「お土産を頂く」は,漢字で書かなければならず,「お土産をいただく」ではだめなのです。
一方,「参考にしていただく」の場合の動詞は,「参考にする」の連用形「参考にして」(又は「する」の連用形「して」)です。動詞はこれに尽きているのです。それに付け加えられた「いただく」は,その前に位置する動詞を補助する補助動詞にほかなりません。補助動詞には,動詞本来の意味は無くなっているか,あっても薄いものになっています。「参考にしていただく」の「いただく」に「頂く」という漢字の意味はほとんど感じられないはずです。ですから,この場合は,平仮名で書かなければならないのです。
他にも多々あります。
「言う」か「いう」か?
「言う」は,口を開いてものを言う動詞として使う場合にのみ,使われ,実質的には「言う」という意味を失っている場合や動詞としての機能を失っている場合は「いう」が使われます。
「彼は『俺は秀才だ』と言っている」「文句を言う」「正直に言う」「言い争う」などは,動詞ですので,漢字で書き,「弁護士という職業」「そういうこと」「台風が来るというが」「顔といい,声といい」「君という奴は」「といっても」「そういえば」などは,口を開いて言葉を出す「言う」の意味はないか,薄いので,平仮名で書くことになります。
「置く」か「おく」か?
漢字の「置く」は,「机の上に花瓶を置く。役員を置く。相談所を置く。」など,動詞として使うときに,使われます。
しかし,補助動詞その他,漢字本来の意味がないときは,平仮名で「おく」と書きます。
「通知しておく。そのままにしておく。明確にしておく。」などです。
「下さい」か「ください」か?
漢字の「下さい」は,「「下さる」という動詞の活用形。意味は「頂く」と同じです。
この場合も,「お便りを下さい」「お菓子を下さい」という場合は,漢字で書き,「話してください」(「話す」が動詞,「ください」は補助動詞),「教えてください」(「教える」が動詞,「ください」は補助動詞)は,平仮名で書きます。
なお,「公用文における漢字使用について」の別紙1(2)キには,平仮名で書く言葉と一つに,「・・・てください(問題点を話してください。)が掲げられています。
「付く」か「つく」か?
動詞の「付く」は,「くっつく」こと,「付着する」ことですので,その意味の言葉として使う場合は,漢字を用います(例:色が付く。秘書が付く。護衛が付く。知恵が付く。先生の後に付く。決心が付く。名前が付く。)が,「付く」の意味がないか,薄いものであるときは,「つく」と平仮名で書くことになります。「浮つく。近づく。高くつく。まごつく。決心がつく。思いつく。」などです。
「見る」か「みる」か?
「見る」は,視覚又は視覚以外の感覚で物事を捉える意味の文字ですので,「顔を見る。味を見る。人生を甘く見る。意見の一致を見る。」など動詞として使う場合は漢字で書き,動詞の連用形に「て」や「で」が付いた補助動詞として使う場合は,平仮名で書きます。「実行してみる。試してみる。そう言われてみると本当にそうだ。彼はまだ生きているとみられている。」などです。
「致す」と「いたします」
「致す」は「届ける。至らせる。及ぼす。仕向ける。」などの意味の動詞です。例えば「思いを致す」などという動詞と使うにはよいのですが,「お詫びいたします。」「お願いいたします。」(「詫びる」が動詞。「いたします」は補助動詞)というような補助動詞として使う場合は平仮名で書くことになります。
なお,「致し方はない」という場合の「致し方」は名詞ですが,名詞も漢字で書きます。このことは後日説明します。
以上より,間違った用語を拾いますと,
× 参考にして頂く × 弁護士と言う職業 × そのままにして置く × 教えて下さい × 近付く × 実行して見る
× お詫び致します
案外,このような間違いを,あなたも,気がつかないでしているのではありませんか?