弁護士の心得 「できません」は禁句。「こうすればできます」で答えるべし。
1,常識の意味
常識とは,根拠を明らかにしないでも,真実であることに疑いを差し挟む余地がないほど自明の事実,といってよいでしょう。
2,常識に潜む危険
常識と思う事実は,それが真実であるかどうかについて,疑問を持たない,という危険があります。
科学的に,論理的にそれが真実ではないことが示されても,科学的,論理的な説明を受け入れようとはしないリスクです。
いわば,天動説が常識であった時代に,科学的,論理的に地動説を説く者がいても,天動説に疑問を持たないのと同じようにです。
要は,知恵の働きを封印してしまう危険があるのです。
3,法の世界における常識の危険
法の常識というものもあります。
法の常識は,いちいち法令や判例を目に見せなくとも,それは当然のこととして語られます。
しかしながら,法も時代と共に変わります。
法が変わらない場合でも解釈が変わることは多々あります。
これらの変化が,一見明確な場合は,法や解釈の変化について行け,法の常識も変わりますが,法や解釈が変わったことが一見明らかとはいえないときは,常識は容易に変わるものではありません。
それと,法の誤解から,間違った法の常識を持つ人もいます。
法に携わる人の世界では,意外に,常識にしてはならない常識が存在しているのです。
4,常識の非常識
常識が間違っていることの,科学的,論理的な根拠が示されているのに,知恵の働きを封印して,常識に反する意見を,常識に反するというだけの理由で,百パーセント否定する人がいます。年齢に関係なくです。
これなど,常識の非常識というべきでしょう。
5,謙虚さと,知識欲は,大切にしたいもの
頑迷固陋であることは,人の成長を阻害します。
常識が常識である結果になってもよいのです。
常識に挑戦する知恵や意欲は大切にしたいものです。
大げさに言えば,文明の勃興,文化の開花と発展,技術の進歩と人智の飛躍,これらは,すべて,既成の常識の枠を破る,知恵の奔騰に由来するものではないか,と思います。
6,当事務所の心得
当事務所では,若い弁護士に,常識をたないことを求めています。
常識を持つと,知恵を使わなくなるからです。
常識で判断せず,常に,判例と文献を,相談者や依頼人の目に示しながら,回答をなし,事務を処理すること,しかも,24時間以内に成果物を提供すること,を,やかましく,求めているのです。
その結果,常識と思っていたことが常識ではないことを知ることがあり,新しい知識を確保し,新しい知恵の働きを得ることも,多々あるのです。