相続相談 41 相続分の譲渡と贈与税
1遺言執行者になった弁護士が、相続人と他の相続人の間の紛争で、一方の代理人になることは許されない、と考える考え(懲戒事由肯定説)の根拠は、
①民法1015条が「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定していること、
②遺言執行者が、その裁量でもって、遺言の執行をする場合は、相続人の間にあっては、中立・公平にすべき信義則上の義務があること
です。
2 遺言執行者になった弁護士が、相続人と他の相続人の間の紛争で、一方の代理人になることが許されるかどうかは、遺言の内容によって判断すべきであり、遺言の内容からして、遺言執行者に裁量の余地のない場合まで、遺言執行者である弁護士が一方の相続人の代理人になってはならないというのは、行き過ぎであると考える考え(懲戒事由否定説)の根拠は、
①民法1015条で「遺言執行者は、相続人の代理人とみなす。」と規定しているのは、遺言執行者のした行為の効果が相続人に帰属することを明らかにした規定でしかない(通説)こと。
②遺言執行者の任務は、遺言者の真実の意思を実現するにあるから、民法1015条が、遺言執行者は相続人の代理人とみなす旨規定しているからといつて、この規定は、必ずしも相続人の利益のためにのみ行為すべき責務を負うものとは解されない(最高裁判所昭和30年5月10日判決)こと。
③遺言執行者が、その裁量でもって、遺言の執行をする場合は、相続人の間にあっては、中立・公平にすべき信義則上の義務があることは、そのとおりであるが、そうであれば、遺言の内容からして、遺言執行者に裁量の余地はない場合まで、遺言執行者である弁護士が、一方の相続人の代理人になってはならない、というのは行き過ぎであること、
です。
3日弁連の考え
旧倫理26条2号を適用していた時代は、懲戒事由肯定説であったが、弁護士職基本規程28条3号を適用する時代になって(平成17年4月1日以降)からは、懲戒事由否定説になったことは、前回のコラムで解説したとおりです。