使用者のための労働問題 性同一性障害者に対する態度
1雇い止め法理の明文化
過去に何度か反復して更新してきた、有期労働契約の雇い止め問題。
例えば、1年間という、期間を切った労働契約を結び、その期間が満了すると、さらに1年間、労働契約を更新するというように、更新を繰り返えし、実質的には、期限の定めのない労働契約と同視できる場合や、労働者からみて、契約更新を期待するのが当然であると思えるような場合には、雇い主において、当該労働者を雇い止めにするには、①客観的に合理的な理由があり、②社会通念上相当であると認められるときでないと、雇い止めは無効になります。この法理は、判例によって確立された法理ですが、昨年、労働契約法19条で、明文化され、この条文は、平成24年8月10日から施行されています。
2 雇い止めのための手続
⑴ 雇い止め(更新拒絶)の予告
まず,契約満了日の30日前までに更新しないことの予告をすることが必要です(平成15年厚労省告示第357号2条)。
⑵ 雇い止めの理由の明示
雇い止めの予告に対して,労働者側から雇い止めにする理由についての証明書の交付を求められたときには,使用者は遅滞なくこれを交付しなければなりません(平成15年厚労省告示第357号3条)。証明書に記載する理由は,「契約期間の満了」では足りず,それ以外の理由(3に記載)を明示しなければなりません。(基発第1022001号)
ですから、労働者を実際に雇い止めにする場合は、労働者から理由の開示を求められる前に、雇い止めの意思表示をするとき、その理由を開示しておくべきです。
それは、雇い止めの有効・無効が争われて、訴訟になったとき、雇い止め時には合理的な理由はなかったのに、その理由の開示を求めると、あわててその理由を探し出してきたという、いわゆる後付(あとずけ)の理由と認定される恐れがあるからです。解雇無効を争う訴訟では後付けで解雇理由を追加することは認められないとする議論もあります。認められるにしても後付けの理由となるとあまり強い理由とはみられません。
3 雇い止めの理由としては、次のようなものが例示されています。
(ア) 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことが合意されていたため
(イ) 契約締結当初から、更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限に係るものであるため
(ウ) 担当していた業務が終了・中止したため
(エ) 事業縮小のため
(オ) 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
(カ) 職務命令に対する違反行為を行ったこと、無断欠勤をしたこと等勤務不良のため
なお、理由は、問題となった行為の態様・日時等を特定して記載すべきです。