企業経営と危機管理 7 循環取引
平成13年9月、農水省は国内牛からいわゆる狂牛病の発生を確認。10月、国内牛の全頭検査をすることにしたが、それ以前に解体された国内牛は国内で流通させず、買取りをすることを決定。ここで、雪印食品関西ミートセンター長が中心になって、外国(オーストラリア)産牛肉を国内産牛肉と偽装することで、国から代金を騙取することを企て、オーストラリアから輸入した牛肉633箱を1日がかりで、国産牛用の箱に詰め替え、2億円弱の代金の騙取に走った。
この牛肉偽装事件で逮捕されたもの9名、有罪判決を受けた者5名であった。会社は再建不可能なほど信用を失墜し、解散の道を選んだ。これにより800名の社員と1000名のパート・嘱託社員が解雇された。解雇された社員の多くは、雪印食品を解雇されたという理由だけで、再就職に支障を来したという。
この事件では、多くの社員が、外国産牛肉を、国内産牛肉用の箱に詰め替える作業に従事したので、多くの社員の知るところになり、社員の中から、本社に、内部告発はあった。そして、本社から、幹部が関西ミートセンターに赴き、調査をした。しかし、この調査で、この事件が判明しなかった。
ここに、雪印食品が、組織ぐるみで、偽装工作をしたのではないかと疑われる原因があり、犯行当時の専務取締役と常務取締役も、詐欺罪の共犯として起訴されたが、この2名は無罪になった。
内部告発では判明しなかったこの事件ではあったが、偽装工作の現場に利用された倉庫業者から、雪印食品本部へ告発することで、やっと、会社にこの事件が判明し、会社が記者会見で、この事件を認め謝罪した。
内部通報と外部からの通報との違いを、見せつけられた雪印食品偽装牛肉事件であった。