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著作権 30 著作隣接権② 実演家(俳優・歌手等)

2012年11月10日

テーマ:著作権

コラムカテゴリ:法律関連

1 定義
実演家とは、俳優、舞踊家、演奏家、歌手その他実演を行なう者及び実演を指揮し、又は演出する者をいい(法2条1項4号)、実演とは、著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう(同3号)。

2著作物を実演する場合でない実演も、実演
著作隣接権である実演家の権利は、著作権とは別個独立の権利であり、実演の対象が著作物でなくとも、権利は生ずる。法2条1項4号の定義規定のカッコ書き(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)に規定されている。
具体的には、奇術、手品、サーカス等である。スポーツであっても、競技ダンス選手の演技や、アイススケートショーにおけるアイススケート選手の演技もこれに含まれると解されている。

3 実演家の権利
⑴録音権及び録画権(法91)
実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する(法91条1項)。
すなわち、実演家の実演を録画・録音する場合や、録画・録音されたものを増製する場合は、実演家の許諾が必要なのである。
歌手や舞台俳優が観客に向かって実演する(歌を歌い演劇をする)とき、予め、録音や録画を禁ずるのは、この権利の行使である。
もっとも、この録音・録画権が、映画の中でされている場合は、映画の利用については、権利は及ばない(これは「ワンチャンス主義」と言われる。一度、許諾して映画になった後は、映画が増製されても、それに対して権利は有しないのである。)
ただし、映画の中の音声のみが取り出されて録音物として複製される場合は、実演家の権利が及ぶ。

⑵ 放送権及び有線放送権(法92)
実演家は、その実演を放送し、又は有線放送する権利を専有する。
なお、「放送」とは、公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信をいう(法2条1項8号)。具体的には、ラジオ放送、テレビ放送、衛星放送等である。また「有線放送」とは、公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信をいう(法2条1項9号の2)。具体的には、有線音楽放送、CATV等である。

⑶ 送信可能化権(92条の2)
これは、平成9年の著作権法の改正により新たに設けられた権利である。
すなわち、実演家は、その実演を送信可能化する権利を専有する。
これは、いわゆるインタラクティブ送信(公衆からのリクエストに応じて自動的に行う送信)につき、公衆が実演を受信可能な状態にする措置をとる権利は実演家が専有することを定めたものである。別の見方をすれば、実演家の許諾なしに、送信可能化はできないのである。

⑷ 譲渡権(95条の2)
実演家は、その実演をその録音物又は録画物の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。ただし、許諾を得て録画されている実演の録画物には譲渡権は及ばない(録音物には及ばないことに注意)。また映画になている場合は、映画には譲渡権は及ばない。

⑸ 商業用レコードの貸与権および貸与報酬請求権(95条の3)
実演家は、その実演をそれが録音されている商業用レコードの貸与により公衆に提供する権利を専有する。
ただし、最初に販売された日から起算して1か月以上12か月を超えない範囲内では、「差止請求権」を行使できるが、それを超えた後は「報酬請求権」しか行使できない(実際の運用は業界団体と権利者団体の取り決めによっている。内容は省く)。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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