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著作権 29 著作隣接権① 映画俳優やテレビ会社の権利

2012年11月9日

テーマ:著作権

コラムカテゴリ:法律関連

1定義
著作隣接権とは、著作物を公衆に伝達する役割を担う、実演家(映画俳優等)、レコード製作者、放送事業者(テレビ会社等)及び有線放送事業者の4者に認められた権利である。
著作隣接権も、著作権と同様に、特別の方式を要せず、実演を行ったときやレコードに最初に音を固定した時、放送や有線放送を行った時に生ずる。
これらは、著作物の創作ではなく、著作物の公衆への伝達行為に与えられる、準創作活動というべき行為である。

2保護期間
著作隣接権の存続期間は、①実演に関しては、その実演を行つた時、②レコードに関しては、その音を最初に固定した時、③放送に関しては、その放送を行つた時、④有線放送に関しては、その有線放送を行つた時から始まり、①実演に関しては、その実演が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時、②レコードに関しては、その発行が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時、③放送に関しては、その放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時、④有線放送に関しては、その有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過した時までである(法101条)。

3実演者には、実演家人格権が認められる。
実演者の実演は、脚本に基づく演技(俳優の場合)であったり、楽譜に基づく演奏(オーケストラの場合)や歌唱(歌手の場合)であったりして、著作物を公衆に伝達する行為ではあるが、実演そのものが、個人の思想や感情等人格の発露ともいうべき創作を伴うものであるので、その実演に対し、実演家人格権が与えられている。
⑴ 氏名表示権(法90の2①)
すなわち、実演家は、その実演の公衆への提供又は提示に際し、その氏名若しくはその芸名その他氏名に代えて用いられるものを実演家名として表示し、又は実演家名を表示しないこととする権利を有するのである。
⑵ 同一性保持権(法90の3①)
すなわち、実演家は、その実演の同一性を保持する権利を有し、自己の名誉又は声望を害するその実演の変更、切除その他の改変を受けないものとする権利を有すのである。
⑶ 録音権及び録画権(法91①)
すなわち、実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有するのである。
なお、他の著作隣接権者には、人格権は認められていない。

4著作権との関係
著作隣接権が生じても、著作権には影響を与えない。
例えば、著作物を実演するには、著作権者の許諾は必要であり、それを録音・録画する場合も、著作権者の許諾がいるのである。

5 著作権が与えられる場合と、与えられない場合
小説を映画化する行為は、著作物である小説の翻案であるから、新たな著作物(二次的著作物)になり、翻案者には、著作物である映画の著作者になり、映画の著作権を取得する。
しかし、小説を出版する行為は、著作物である小説の複製でしかない。出版する者には、著作権は生じない。この違いは、立法の違いによる。


この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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