遺言執行者④ 相続財産目録調整義務続き➁
Q 「相続ノートには、同じ「共有」という言葉が使われながら「遺産共有」と「共有物共有」があること、また、その分割方法が異なることが書かれています。その違いを教えて下さい。
A
1 民法には、2つの共有があります。
1つは遺産共有(民法898条)であり、もう1つが共有物共有です。
その違いですが、
⑴遺産共有
①意味
遺産共有とは、遺産つまり相続財産の共有です。相続財産が複数の財産から成る場合は、複数の財産を包含した遺産を共有するのです。
②解消方法
遺産共有の解消は、遺産分割ですが、分割の対象は遺産ですから、例えば、相続財産の中にA宅地とB宅地がある場合、A宅地は甲という相続人が取得し、B宅地は乙という相続人が取得するということが可能になるのです。
遺産共有状態を解消するのは遺産分割です。争いになれば、家庭裁判所の審判で遺産分割がなされます。地方裁判所が訴訟の中でする共有物分割の方法で解消することはできません(最判昭62.9.4)。
なお、最判昭62.9.4の事件は、相続人の一部の者が、相続財産である不動産につき法定相続分による共有登記手続をした後、共有物分割請求をした事件ですが、同最判は、遺産相続により相続人の共有となった財産の分割は、家庭裁判所が審判によってこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではないとして、共有物分割請求訴訟を不適法だと判示しました。
⑵共有物共有
①意味
共有物共有というのは、個別の財産を共有している状態を言います。いわば財産単位の共有を言うのです。
②解消方法
例えば、遺留分減殺請求の結果、A宅地とB宅地を、相続人甲と相続人乙がそれぞれ共有することになった場合、共有状態を解消するには、A宅地の共有物分割と、B宅地の共有物分割をすることになるのですが、最判昭62.4.22は、共有物である土地が複数ある場合、それらが外形上一団の土地である場合はもちろん、それらが一団の土地でない場合でも、一括分割の対象として、分割後のそれぞれの部分を各共有者の単独所有とすることも、現物分割の方法として許される、と判示しており、また、最判平8.10.31は、全面的価格賠償の方法にいる共有物分割も可能である旨判示していますので、遺産分割と共有物分割の方法に差違はないことになります。扱う裁判所が違うだけになります。