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コラム
交通事故 38 医療関係費① 治療費
2012年6月19日 公開 / 2012年8月15日更新
1 治療費の支払義務者
病院に対する治療費の支払義務者は、被害者本人又はその相続人である。ただし、加害者が任意保険に加入している場合は、通常、任意保険会社が、直接病院へ治療費を支払う運用がなされている。
2 国民健康保険や健康保険は利用可能
交通事故によって死傷した場合の治療については、健康保険が利用できる。健康保険の適用を受けない自由診療を希望すれば、それも可能であるが、①自賠責保険の支払限度額が120万円しかないこと、②被害者に過失がある場合は治療費のうち被害者過失割合分は被害者が負担することになること、から、治療費単価が安い健康保険診療を受けた方が有利である。
なお、現在は、ほとんどの薬や治療にかかる費用は、健康保険も認めているので、自由診療にしなくとも、十分な治療を受けることは可能である。
3 担当医との信頼関係は大切
現在、多くの病院では、患者に対する医療行為(検査、手術、投薬等)や治験(治療・薬物の効果の検証)は、インフォームドコンセント、すなわち、十分な説明とそれを理解した患者の同意、の上で、なされている。交通事故の場合、傷害、とくに後遺障害の程度、内容については、後日争点になることが多いので、担当医との間に、十分な意思の疎通と信頼関係を築くことは大切である。
4 整骨院や鍼灸院での施術料・温泉療養費
むち打ち症などの場合、病院の治療ではなく、整骨院や鍼灸院での施術を受けることがあるが、それが治療として必要かが、後日訴訟で問題になることがある。医者の証明がある場合は、認められるが、その証明がない場合は、認められないことが多い。医者の証明は得られなかったが、柔道整復師による施術が症状の軽減効果があったとされ、その費用を損害と認めた神戸地判平7.9.19等多数があるので、これらの施術を受ける場合は、日記などに施術の効果があったことなどを詳細に書いておくべきであろう。医師の勧めがあった温泉療養にかかる費用の一定割合を認めた裁判例(東京地判昭53.3.16は、費用の60%)もある。
5 治療器具、薬品代、水泳教室費用など
必要に応じ、認められる。妊娠していた女性被害者がX線検査を避け、韓国に帰国して漢方治療を受けた費用約100万円を認めた東京地判平10.1.28、事故時1歳9ヶ月の男児の言語遅滞の症状改善のためのスイミングスクール費用70万円余りを損害と認めた裁判例(京都地判平7.10.31)などもある。
6 入院中の特別室使用料
医師の指示や特別の事情(症状が重篤・空室がなかった等)がある場合は、認められる。
7 将来の特別室使用料、差額ベッド
必要に応じ認められる。5年後、10年後に各1回の手術が必要な各3日間の個室料金を認めた裁判例(大阪地判平13.9.10)がある。
8 症状固定後の治療費
下半身麻痺によるリハビリ費用を認めた浦和地判平7.12.26等がある。
9 視力障害者の生活訓練費及び盲導犬訓練費
これらを認めた東京地判昭61.5.15等がある。
10 療費の打ち切り問題
任意保険は、他覚的所見(医学的な証明)のないむち打ち症については、治療開始後6ヶ月ほどで治療費の打ち切りを通告する場合がある。その場合で、なお、治療が必要だと判断した場合、主治医にその意見書を書いてもらい、任意保険会社を説得して治療費を支払うようにしてもらうか、それができないときは、被害者自身が治療費を支払い、訴訟でその支払いを求めることになる。いずれの場合も、6ヶ月を超えて治療が必要な理由を、医者の意見書などで証明する必要がある。
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