遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
1 遺言自由の原則・遺言撤回の自由
人は、誰でも、遺言を書く自由、書かない自由が認められています。これが「遺言自由の原則」です。また、いったん書いた遺言を、撤回することも自由に出来ます。これが「遺言撤回の自由」です。
2 方式の必要性
遺言は、遺言者の最終の意思ですが、相続人その他の利害関係者に、遺言者の最終の意思が、なんなのか?が分からないとき、亡くなってしまった遺言者に尋ねることはできません。そのため、遺言者が生きている間に、遺言者の最終の意思を明確にする必要があり、遺言に一定の方式が要求されるのです。
この理は、遺言の撤回の場合にも生きてきて、遺言の撤回にも、遺言を書く場合と同じ方式が要求されるのです。
3 民法1022条
民法1022条は「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」と規定していますので、遺言の撤回は、遺言の方式に従わなければなりません。
ただし、遺言の方式ならば、違った種類の遺言形式でもかまいません。
公正証書遺言を、自筆証書遺言で撤回することは有効です。この場合、若干の書き損じがあり、自筆証書遺言についての加除訂正の方式を踏んでいなかったとしても、遺言の撤回は有効だとする裁判例(東京地裁平成2.12.12判決)があります。
自筆証書遺言を死亡危急者遺言で撤回しても有効です(東京高裁平成18.6.29判決)。