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拾井央雄

知的財産や技術系法務に強い理系出身の法律のプロ

拾井央雄(ひろいおうゆう) / 弁護士

京都北山特許法律事務所

コラム

【肖像権】遊園地で写した写真のSNSへの投稿

2017年1月27日 公開 / 2021年6月8日更新

テーマ:身近な法律

コラムカテゴリ:法律関連

遺言

質問

遊園地で会員様を写した写真を当社のフェイスブックページに投稿したいのですが、背景にはたくさんの人が写りこんでいます。問題ないでしょうか。

回答

写真に写った会員様は、撮影を承諾していたものと考えられます。しかし背景に写りこんだ人々が撮影を承諾していたとは考えられません。まず、このような人々を撮影したことに問題はないでしょうか。

一般の人たちを承諾なく撮影することに関しては、人格権に基づく肖像権の侵害とならないかが問題となります。
これについては、判例(最高裁H17.11.10判決)上、撮影された人の社会的地位、撮影された人の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性などを総合的に考慮して、撮影された人の人格的な利益の侵害が社会生活上の限度を超えるかどうかで判断すべきとされています。

遊園地でたくさんの人が背景に写りこんでいるということですから、その遊園地で楽しんでいる人々が小さく写っているものと考えられます。
このような写りこみは遊園地などで普通に起こり得ることですから、通常は、人格的利益の侵害が社会生活上の限度を超えるとまでいうことはできないでしょう。したがって、撮影したことも通常は違法と言えません。

では質問の写真をフェイスブックなどSNSに投稿しても問題はないでしょうか。
写っている会員様は撮影することを承諾しています。しかし、それでSNSに投稿することまで承諾したとは言えません。
休日に遊園地で楽しんでいることは、一般的に秘密にしたい情報ではないかもしれませんし、遊園地にいる他の大ぜいの人に認識もされています。
そうだとしても、SNSに投稿されることによって人に知られる範囲は非常に広くなります。自分の容貌がはっきり分かる大写しの写真が広く公開されれば、それなりの心理的負担を感じさせることになると考えられます。
したがって、撮影について承諾があっても、会員様の写真を無断でSNSに投稿することは、肖像権の侵害にあたる可能性があります。

これに対し、たまたま背景に写りこんだ不特定多数の人の心理的負担は、会員様の場合と比べて小さいと考えられます。
この場合、写り方の態様にもよりますが、肖像権の侵害にあたる可能性は会員様の場合と比較してより小さいものと考えられます。

では、肖像権の侵害となっても表現の自由として許される場合があるのではないでしょうか。
この点については、
(1)公共の利害に関する事項と密接な関係があるか、
(2)専ら公益を図る目的で行われたか、
(3)写真撮影やSNSへの掲載の方法がその目的に照らして相当か、
という点から判断されるのが一般的です。

遊園地で楽しんでいる姿を公開することに、公共性や公益目的があるとは通常は言えないでしょう。
また、写真撮影の承諾を得た会員様にSNSへの投稿の承諾を得ることが困難であるとは通常考えられません。
したがって、SNSへの掲載方法が相当であるとも言い難いと考えられます。

以上からすれば、SNSへ投稿するに際しては、あらかじめ会員様の承諾を得ておくべきと言えます。
背景に写りこんだ不特定多数の人については、表情が分かるような場合にはボカシ処理をするなどの処置をとっておいた方がよいでしょう。

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