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拾井央雄

知的財産や技術系法務に強い理系出身の法律のプロ

拾井央雄(ひろいおうゆう) / 弁護士

京都北山特許法律事務所

コラム

防犯カメラの設置がプライバシーを侵害すると判断された例

2018年4月23日 公開 / 2021年6月8日更新

テーマ:身近な法律

コラムカテゴリ:法律関連

遺言
カメラの撮影が常に行われており、原告らの外出や帰宅等という日常生活が常に把握されるという原告らのプライバシー侵害としては看過できない結果となっていること、被告は防犯を図るものであるとするが、窓の防犯対策としては二重鍵を設置するなどの代替手段がないわけではないこと、その他の種々の事情を考慮すると、原告らのプライバシーの侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えている。

事案の概要

X1は、自己が所有する建物(「R荘東側部分」)の2階(X1居室)に居住していました。
X2は、夫Eとその父Dが共有する建物(X2宅)に居住していました。
X3は、D所有土地上のX3宅を所有し居住していました。
X4は、X4宅をGと1/2ずつ共有して居住していました。
Yは、アパート(R荘西側部分)を所有して賃貸していましたが、その建物には居住していませんでした。

Yは、平成24年ころ、R荘西側部分1階の居室の南側窓の上にあるひさしの下にカメラ1を、
R荘西側部分1階の北西角の階段の支柱にカメラ2を、
R荘西側部分2階の北西角の屋根の支柱にカメラ3を、
R荘西側部分の北西階段上の屋根の支柱にカメラ4を、それぞれ設置しました。

これに対してXらは、プライバシー侵害を根拠に、カメラの撤去と損害賠償を請求しました。

裁判所の判断

肖像権に関する最高裁判例
人の肖像を無断で撮影することが不法行為となるかどうかについては、最高裁判例があります(最判昭44・12・24、最判平17・11・10)。 本判決は、これらの最高裁判例を前提に次のように述べています。

「人はみだりに自己の容ぼう等を撮影されないことについて法律上保護されるべき人格的利益を有する。ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、撮影の場所、撮影の範囲、撮影の態様、撮影の目的、撮影の必要性、撮影された画像の管理方法等諸般の事情を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受任の限度を超えるものと言えるかどうかを判断して決すべきである。」

裁判所は、各カメラについて、上述の「諸般の事情」を検討しました。

カメラ1

①被告所有建物の1階居室南側窓及び同窓付近が映る。
②X3宅玄関入口付近に立っている人は、顔を識別できるほどではないものの、かなり鮮明に映る、
③X4がX4宅の玄関から出入りする際、顔を認識できるほどではないものの、人の出入りがはっきりとわかる程度に映る、
④X2宅通用口の前付近においても、少なくとも人が通過していることは映像上認識することが可能である、
⑤X1、X4、X3本件道路を通行してX2宅の西側にある公道に至るまでの間、本件道路を通行している人について終始撮影されていることが認められ、日常生活において、X1、X4、X3、X2は本件道路を通路として使用している、

以上の認定事実を前提に、

①Xらの外出や帰宅等という日常生活が常に把握されるというXらのプライバシー侵害として看過できない結果となっている、
②Yは防犯目的とするが、窓の防犯対策としては二重鍵を設置するなどの代替手段がないわけではない、
として、Xらのプライバシー侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えていると判断しました。

またプライバシー権に基づく妨害排除請求として、カメラ1の撤去を認めました。

しかし損害賠償については、
撮影範囲が屋外で全くの私的空間でない、
目的が防犯でありXらの監視目的まで含まれず悪質性が低い、
2週間経過後には自動的に上書きされて消去され、永続的に保存管理されるものではない、
として、慰謝料はXら各10万円が相当としました。

カメラ2及びカメラ3

①R荘東側部分1階及び2階の各居室の玄関付近や廊下等が撮影範囲となっていない、
②R荘東側部分1階1号室玄関付近及び1階廊下、X1居室の玄関付近、X1所有建物2階廊下に及んでいるとは認められない、
との認定事実を前提に、

撮影範囲がプライバシーを侵害するような範囲に及んでいると言えず、Xらに対する監視目的があるとまで認めることはできないから、X1のプライバシーが社会生活上受忍すべき限度を超えて侵害されているとはいえないと判断しました。

カメラ4

①X4宅がある本懸念全体建物の南側に向けて撮影されているが、X4宅からは一定の距離がある、
②X4宅や本件全体建物南側の通行路部分を認識できる形で撮影範囲に入っていたと直ちに考えることはできない、
③X4宅の玄関、その付近、X1が本件全体建物の東側にある階段を使用して1階に降りた後、公道にでるために本件道路に向かう際の通行路にまで及んでいると認めることはできない、
④被告所有建物の2階居室1戸の玄関、本件全体建物の西側階段等を撮影していることはYも認めているが、これらの部分はX1が利用することは可能であっても日常生活に密接不可分な場所とまでいうことはできない、
との認定事実を前提に、

Xらに対する監視目的があるとまで認めることはできないから、X1・X4のプライバシーが社会生活上受忍すべき限度を超えて侵害されているということはできないと判断しました。

雑感

近隣とのトラブルを理由に、防犯カメラを取り付けたいが問題ないかという相談を受けることがあります。
手ごろな価格で入手することができますが、場合によりプライバシー侵害となることがありますので、争いをかえって大きくしないか気をつけた方がいいですね。

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