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拾井央雄(ひろいおうゆう) / 弁護士

京都北山特許法律事務所

コラム

【著作権】児童館で行う夏休みの親子イベントと著作権

2021年5月8日 公開 / 2023年4月6日更新

テーマ:身近な法律

コラムカテゴリ:法律関連

著作権

質問

児童館でする夏休みの親子イベントで、市販のDVDを使った映画会を企画しています。
参加できるのは児童館利用者の親子で、入場料は無料です。
いつも子どもたちが遊んでいるスペースを片付けて、少し大きめの家庭用テレビで上映します。
運営するのは児童館の職員で、普段支給される給与の範囲でお願いしようと思っています。
やはり利用許諾をもらう必要があるんでしょうか。

回答

映画の市販DVDには、映画の著作物として著作権が存在します。
そしてDVDを上映する権利は著作権者が持っています。
自分で見たり家で友達と集まって見たりするのでなければ、著作権者の許諾を得なければ上映できないのが原則です。

その一方で、著作権法は、著作権が制限される場合を定めています。

その一つが非営利目的に利用する場合です。

① 営利目的でなく、
② 入場料金などを取らず、
③ 報酬も支払わない場合、

公表された著作物を無許可で上映等することができるとされています。

ただし、
①イベント自体は親睦目的でも、会社による顧客サービス目的のイベントであるような場合は、営利目的とされる場合があります。
また、②入場料を取っていなくても、会費を払っている会員だけに入場者を限っているような場合には、その会費が入場料金と見られることがあります。
さらに、③イベントの運営をお願いした人に支払った交通費が、交通費としては高額であるような場合も、「報酬」を支払っているとされる場合があります。

著作権者側のサイトなどでは、学園祭での上映は著作権法で禁止されていますと書いている場合があります。

たしかに、文化祭で生徒が演劇を上演する場合と違って、市販のDVDを上映すると内容的にテレビ放映と同じ品質になります。
権利者側がそのような主張をするのも、あながち理解できないことではありません。
しかし著作権法は、無限定に「著作者等の権利の保護を図」るのではなく、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ」という限定を設けています。
それが「文化的所産の公正な利用」と言えるかどうかということです。
今回の企画もそうですが、非営利かつ無料かつ無報酬で、権利者に経済的打撃を与えるほどの上映会が行われるのは、なかなか想定し難いところです。
この場合に法律が著作権を制限しているのも、そのことが前提になっているのだと思います。

今回のように、児童館の利用者に限って大型とはいえ家庭用テレビで上映する場合に許諾を必要とすると、著作権法の規定をないがしろにすることになりかねません。
今回の企画であれば、著作権者に許諾を求めるまでの必要はないでしょう。

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