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上野峰喜

環境に優しい電解水や食品資源リサイクル機器のプロ

上野峰喜(うえのみねき)

株式会社金沢テックサービス

コラム

産めない島、死ねない島

2018年7月2日 公開 / 2021年3月2日更新

テーマ:賛否両論

コラムカテゴリ:くらし

米国から返還されて、今年50年になる小笠原諸島。
小笠原諸島は、東京都に属し父島・母島を中心に30余りの島々で構成されている。
            
   小笠原諸島の衛星写真

島へのアクセスは非常に厳しく、東京港と父島母島を結ぶ6日に1便で就航している貨客船のみ。(観光シーズンのみ3日に1便となっている)
所要時間も約24時間、台風シーズンや冬場の悪天候時には欠航も多い。
2011年には世界遺産に登録され、その貴重な自然は厳重に管理されている。

しかし、父島と母島のみに村営の診療所があるが医師と歯科医師のみが常駐し2島の診療所には手術対応ができる医療機能はない。
そのため急病患者が発生した場合は、村役場から東京都に連絡が入り、東京都知事が海上自衛隊に緊急出動を要請している。
           
連絡を受けた自衛隊は、基地のある硫黄島より救難ヘリコプターで小笠原に向かい患者を乗せ、いったん硫黄島の基地に戻り、そこから救難飛行機に乗り換えてで本土へ搬送している。
そのため「夜間に発病すると手遅れ」となるケースが多い。
島には助産婦もおらず、妊婦は出産予定日の数カ月前には本土に渡り出産を待つ状態。

このように厳しい医療体制のため、小笠原は「産めない島、死ねない島」とも言われている。
そのような背景もあり、いま島に「空港建設」話が持ち上がっている。
過去にも空港建設の話しは持ち上がっていたが、いずれも島民の意見がまとまらず立ち消えとなっていたが,島民への緊急医療体制強化、地域振興等の理由から、世界遺産に指定されていない箇所に建設しようとする新たな動きがある。
しかし、空港建設により自然環境の悪化を懸念する動きも浮上している。
            
世界的に貴重な自然を後世に残すのか? それとも島に生きる住民の生命を優先するか?
返還50年を迎えた小笠原は、いま先送りできない新たな課題に直面している。

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