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佐藤浩明

消化器内科専門医で「内視鏡検査」のプロ

佐藤浩明(さとうひろあき) / 内科医

さとうクリニック内科・消化器科

コラム

AED使用の是非について

2017年8月29日

テーマ:医療コラム

コラムカテゴリ:医療・病院

AED使用の是非について

おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘AED使用の是非について’というお話です。
 先日、女子高校生がグラウンドで倒れ、そこに駆けつけた指導教員が「呼吸は弱いけれどある」と判断し、救急車が来るまでの間、AED(自動体外式除細動器)は使用しなかったという記事が大きく報道され、その教員の対応に避難が集まっている様です。でも、この問題は新聞紙面に書かれてあるほど単純な問題ではないと思われます。
  それではここで言われている「呼吸は弱いけれどある」とされたいわゆる死戦期呼吸とはどのようなものなのでしょうか?死戦期呼吸は、あえぎ呼吸ともいわれる異常な呼吸で、心停止直後などにみられるしゃくりあげるような呼吸なのですが、一般の方が見てはそれが死戦期呼吸かどうかを判断するのはかなり難しいのではと思われます。この教員も死戦期呼吸であることには気付かなかったようですが、生徒の異常は感じ救急要請をしていますから対応に明らかなミスがあったとは言えないと思われます。
 実際に目の前で人が倒れ、その人の呼吸状態がおかしいということを的確に判断出来る一般の方がどれだけいるでしょうか?実はかくいう私もとある駅のホームで列車を待っていた際に目の前で20代前後の女性が突然倒れ、呼吸停止であることに気づき、その場で心臓マッサージをした経験があります。その方は幸いにもAEDは使用せずに自発呼吸再開し、大事には至りませんでしたが、もしあの場に私がいなければ彼女はどうなったのだろうと思うとたまたま身近に医療関係者がいたことでもしやの最悪の状況が回避出来たのかも?と思うとやはり常日頃の備えの重要性をしみじみ感じます。
基本的にはもし、身近で倒れた方がいた際に普通の呼吸をしていないと思ったら、まずは胸骨圧迫による心臓マッサージ。これを徹底するだけで、AEDの使用に関してはあまり悩まずに済むかもしれません。心停止じゃない人に胸骨圧迫したら、よほど意識が悪い(昏睡状態)ということでもない限り、なんらかの反応をしますので反応がないならAEDを装着することに躊躇はなくなりますし、その際にはAEDを着けて対処すれば良いのです。その後に実際に使用すべきかどうかは機械が判断してくれます。これに関しても、「脈あり心室頻拍(VT)だったらAED使用が害になる可能性もあるから、心停止なのかどうかを適切に判断してからAEDを装着すべき」となどいう専門的な意見がないではありませんが、でもどうでしょう?その僅かな可能性に言及してAEDの使用を萎縮させるより、より広くAED使用を普及させる方が有用な状況ではないかと思われます。もちろん後々には結果をしっかり検証することは必要かも?知れません。まずは身近で起こりうるであろう生命の危機に対して、少しなりとも対応出来る環境を作り上げていくことこれこそが今の喫緊の課題であろうと思われます。そして、枝葉末節的なことに拘泥するのみではなくAEDの使用に関して少しずつでも先に進めることが大事です。

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佐藤浩明(さとうクリニック内科・消化器科)

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