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中村正彦

遺産相続に関するトラブルを法的に解決する弁護士

中村正彦(なかむらまさひこ) / 弁護士

弁護士法人 松尾・中村・上法律事務所

コラム

相続人の中に行方不明者がいる場合の遺産分割~不在者財産管理制度と失踪宣告

2021年4月14日

コラムカテゴリ:法律関連

コラムキーワード: 相続問題相続 手続き

 被相続人が遺言を遺していない場合、相続人「全員」の協議による遺産分割を行わなければなりません。
 しかしながら、特に相続人が多数存在する事案や、相続人間に親戚付き合いがほとんどないような事案では、相続人の中に行方不明の人がいて、その人と連絡が取れない場合(相続人の行方不明状態)が生じることがあります。
 ここで相続人の行方不明状態とは、戸籍上・住民票上はその相続人の存在(生存)の確認が取れるものの、その人は実際にはその住所に居住しておらず、転居先・勤務先など、現在の居所が不明であって、その所在がいろいろ手を尽くしてもわからない場合のことです。
 色々な事情によって、住民票を移さないまま姿をくらましてしまう人は案外多いものです。人知れず自殺をして死亡届が出されない場合や、犯罪に巻き込まれるなどして連絡が取れなくなっている人もいるかもしれません。
 このような場合、行方不明状態の相続人が遺産分割協議に参加することができない以上、遺産分割協議はできず、相続問題は前に進まない状態になってしまいます。
 では、このような場合、どうすればよいのでしょうか。

不在者財産管理制度

 このような場合に、民法は不在者の財産の管理という制度(25条以下)を設けています。
 具体的には、行方不明の人が「従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)」に該当する場合には、利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、債権者など)または検察官からの請求(申立)によって、家庭裁判所がその財産管理人(「不在者財産管理人」といいます)を選任し、選任された不在者財産管理人が不在者に代わってその財産の管理を行うことが可能になります。
 行方不明の人が不在者に該当するかどうかについて、家庭裁判所は不在者財産管理人選任申立書や所在不明となった事実を裏付ける資料を確認した上で、申立人から事情を聴いたり、不在者の親族に照会したりなどの調査を行います。この調査の過程で、不在者の所在が判明することもあり、この場合は、不在者財産管理人は選任されません。
 不在者財産管理人が選任されたとしても、不在者財産管理人は「権限の定めのない代理人」ですので、その権限は、不在者の財産の保存行為・利用・改良を目的とする行為(管理行為)に限られています(民法103条)。
 したがって、不在者の財産処分の性質を持つ遺産分割をするためには、家庭裁判所の許可を得る必要があり、この許可を得た上で、不在者財産管理人は、その権限を越えた行為である相続に伴う遺産分割協議を行います(民法28条)。
 なお、不在者財産管理人には親族がなることもできますが、その親族が相続人の一人である場合、「親族個人としての立場」と「不在者財産管理人としての立場」で同じ相続についての遺産分割協議を行うことになってしまい、利害相反行為(不在者の利害と親族の利害が相反する)になるため、相続人である親族は不在者財産管理人になることはできず、利害関係のない弁護士などの専門家が選任されることとなります。
 
 以上のように、相続人の中に行方不明者がいる場合であっても、不在者財産管理人制度を利用することで、遺産分割協議を行うことが可能です。
 もっとも、不在者財産管理人は、あくまでも本人のためにその財産を管理し、遺産分割協議を行わなければなりませんので、不在者本人にとって不利益となるような内容の遺産分割協議をすることはできないことに注意が必要です。

 また、不在者財産管理人の仕事は、申立のきっかけとなった当初の目的(遺産分割など)を果たしさえすれば終わるものではなく、管理業務の終了事由は、民法25条2項、家事事件手続法147条や不在者財産管理制度の趣旨から次のとおりとされています。

 <不在者財産管理業務の終了事由>
 ・不在者本人が財産管理人を置いたとき
 ・不在者本人が自ら財産管理をすることができるようになったとき
 ・管理すべき財産がなくなったとき
 ・不在者の死亡がはっきりしたとき
 ・不在者に失踪宣告がされたとき

 これらの事由が生じた場合、不在者財産管理人は、家庭裁判所に報告を行い、管理財産を引き継ぐべき者に対して引継を行うことになります。
 このように不在者財産管理業務は、相当長期間に及ぶこともありますから、引き受ける際には、この点も留意すべきでしょう。

失踪宣告

 不在者財産管理業務の終了事由にもなっている失踪宣告についても、ここでご説明しておきましょう。
 失踪宣告とは、不在者について、その生死が7年間明らかでないとき(「普通失踪」といいます)、又は、戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇し、その危難が去った後その生死が1年間明らかでないとき(「危難失踪」といいます)において、家庭裁判所が、利害関係人(不在者の配偶者、相続人にあたる者、財産管理人、受遺者など失踪宣告を求めるについての法律上の利害関係を有する者)からの請求(申立)に基づき、その不在者について失踪宣告を行い、生死不明の不在者が法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です(民法30条)。

 失踪宣告の申立がなされると、多くの場合、申立人や不在者の親族などに対し、家庭裁判所調査官による調査が行われ、裁判所が定めた期間内(3か月以上。危難失踪の場合は1か月以上)に、不在者は生存の届出をするように、不在者の生存を知っている人はその届出をするように官報や裁判所の掲示板で催告をして(「公示催告」といいます)、その期間内に届出などがなかったときに失踪の宣告がなされます。

 失踪宣告がなされると、その不在者は法律上死亡したものとみなされ、不在者についての相続が開始することになり、遺産分割は、不在者の相続人も交えて行うことになります。
 もっとも、家庭裁判所の調査の過程で不在者の生存と所在が判明することも少なくなく、この場合は、失踪宣告はなされず、不在者財産管理人が選任されている場合、先に述べたようにその業務は終了し、現れた不在者に管理財産を引き渡すことになります。

                              弁護士 松尾善紀

この記事を書いたプロ

中村正彦

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中村正彦(弁護士法人 松尾・中村・上法律事務所)

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