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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

不動産会社と消費者の情報格差を埋めるための伴走型コンサルティング

2022年1月11日

テーマ:不動産情報の格差解消

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: まちづくり不動産管理住宅購入 諸費用

【はじめに】
不動産の売買をした経験がある人なら、多かれ少なかれ不動産会社との情報格差を実感されたのではないでしょうか。

不動産会社の選び方、査定価格の妥当性、重要事項説明書や売買契約書の理解などで、不動産会社と消費者の間に、圧倒的な情報量の格差があるのが現実です。そして、多くの場合、消費者はそれに気がついていません。このような現状を少しでも改善するために、伴走型のコンサルティングが有効だと考えます。

本コラムでは、まず情報格差の現状とその改善に向けた取組みを紹介します。次に、伴走型コンサルタントが消費者にどのように役立つかを考えてきます。

【情報格差の現状と課題】
不動産会社と消費者の間にはどのような情報格差が生じているのでしょうか。

一つ目は、消費者の多くは店舗選びの選択基準を十分に持っていません。大手だから、フランチャイズ店だから、あるいは地元で長年営業しているからという理由だけで決めていないでしょうか。

もちろん規模や知名度は信用や安心感につながるという意味で重要な選択基準の一つです。しかし、それだけではその店舗が依頼者のために何ができるか、どのような営業活動をしてくれるかという視点は十分とは言えません。売主からすれば少しでの高く、そして早く売るために、また買主からすれば少しでも安く買うために何ができるかといった情報は欲しくなります。

二つ目は、査定価格の妥当性を判断するために必要な価格情報です。売主は高い査定価格を提示され期待して仲介を依頼したものの、時間を要した挙句に値下げ要求を受け入れざるを得ないこともあります。それを避けるには相場観などを頼りに査定価格を吟味する必要があります。

そして普段から不動産チラシやネットなどを活用し、所有する不動産にどのくらいの値が付くか、情報収集しておくことが求められます。それでも、消費者の誰もが相場場を掴めるわけではありません。

三つ目は、消費者にとって不動産のリスク情報は把握しづらいものです。不動産には法令等による多くの規制があり、それが建築や売買の自由度を縛り価格にも影響を与えます。それを理解することも簡単ではありません。

また、土地や建物、建物設備には欠陥などが存在する可能性があります。売主や不動産会社が知っている情報の全てが買主に提供されているとは限りません。特に、床下や天井裏、地中埋設管といった外観からの確認が難しい箇所は、情報が提供されない限り知る術はありません。

【情報格差への取り組みと限界】
査定価格は、その根拠を示すことが宅建業法で定められ、不動産リスクは重要事項説明書で開示されることになっています。しかし、それで買主は十分に理解できているのでしょうか。重要事項説明は、多くが契約締結の直前で行なわれることが未だ少なくありません。重要事項説明の内容が肚に落ちる消費者は、専門家なみの情報を備えているわけで、極めて限られます。

昨今は、不動産の売買について消費者が学ぶ機会は少なくありません。各種セミナーやYouTubeなどのWeb媒体からも様々な関連情報を収集できます。宅建業者が主体のものから中立的な立場のものまで、それらは玉石混交です。その結果、消費者は情報過多に陥ってしまい、逆に情報の選択に戸惑ってしまいかねません。

筆者は不動産売買を考えている消費者と話をする機会がありますが、消費者に寄り添ってくれる専門家へのニーズを感じます。それは専門能力が備わっていることは当然で、不動産会社とは一定の距離をおく専門家を求めています。このことは不動産売買にまつわる不安が、セミナーやネット情報だけでは十分に解消しきれていないことを示唆しています。

【4Cとコンサル】
不動産情報の格差を解消する方法をマーケティングの4Cを切り口に考えてみます。4Cとは、マーケティングに重要な「顧客価値(Customer Value)」「顧客コスト(Cost)」「顧客にとっての利便性(Convenience)」「顧客とのコミュニケーション(Communication)」を言います。

消費者にとって何が重要な不動産情報であるかを把握し,それを提供できるかどうかが顧客価値に繋がります。それは消費者によって異なってきます。情報格差の解消には、オーダーメイドの情報提供が欠かせません。

不動産情報へのアクセシビリティを良くし、消費者の利便性向上です。情報提供のタイミングや場所も顧客目線で考えられているかがポイントです。それが面倒くさければ消費者は敬遠します。どのようなタイミングでどういった情報をどのようにして提供すれば理解が深まるか、これは消費者によって異なります。

消費者が不安に思うこと、知りたいことを把握するには、良好な関係を築き、質問や相談がしやすい関係を構築できるかがポイントです。通り一遍の質問からは不安に思う心理を読み取ることはできません。

【まとめ】
不動産会社と消費者の間にある不動産情報の格差を解消するには、どのような情報が非対称になっているかを把握することです。また非対称な情報が時間の経過に伴い変化したり、新たに発生したりします。それらに対応するために、消費者と常に伴走するコンサル、伴走型コンサルティングが望まれているのではないでしょうか。

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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(住まいの消費者教育研究所)

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