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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

高齢化するマンションは終の棲家になるか

2021年2月1日 公開 / 2021年2月18日更新

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: まちづくり都市計画マンション管理

新築マンションが売れ続ける一方で、マンションの老朽化問題が進行しています。

国土交通省の推計では、2011年末時点のマンションストック総数は約580万戸で、約1400万人が居住しています。そのうち築30年以上の高経年マンションは約106万戸を占めます。

更に入居者の高齢化です。国土交通省「マンション総合調査」によると、60歳代以上の世帯主の割合は1980年度には1割にも満たなかったものが、2008年度には約4割にまで増加しています。また70歳以上の世帯主も2008年度には1割を超え、高経年マンションになるほど高齢化が進行しています。国土交通省の集計によると、2008年時点の「60歳以上のみ」世帯の割合は、高経年マンションになるほど上昇し、1970年以前に建築されたマンションでは過半数を超えています。
※60歳以上のみの世帯の割合
1970年以前に建築   52%
1971~1980年に建築  48%
1981~1990年に建築  37%
1991年以降に建築   17%

もちろんマンションの高齢化に纏わる課題は、建築年次や立地条件、専有部分の広さ、マンションの規模、管理状況、住宅以外の用途の有無、入居者の属性などによって様々です。しかし、エレベーターホールと共用廊下の間や敷地内にある段差、エレベーターがない階段室型やスキップスロアータイプの住棟など、高経年マンションに共通した課題が存在しています。更に専有部分はハードルが高く、玄関の段差や床下配管の都合で生じる室内の段差は建替えでもしない限り容易に解消しません。更に、こういった課題を認識していても、費用がかかる等の理由で容易に合意は得られません。

管理組合活動にも様々な影響が出てきています。高齢者の総会への参加が減るとか、理事の成り手がいないため理事会としての適切な判断が難しくなる恐れがあります。更に経済的にゆとりがない世帯が増えて、修繕工事にもブレーキがかかります。そこに管理組合がどこまで高齢者支援ができるか、悩ましい問題です。

敷地に余裕がある団地タイプのマンションには永住志向の高齢者が多く、マンション内に高齢者用の施設をつくり、定年退職後の元気な高齢者を中心にコミュニティ活動を行い、高齢者にとり住みやすい安心なマンションを目指す動きも見られます。そして分譲マンションの適正な管理運営や管理組合のかかえる課題に対して、マンション管理に関する専門家を派遣するなどの支援をする自治体も出てきています。

高齢化するマンションが終の棲家になりえるとすれば、管理組合を主体に、自治体や専門家、多くのサポーターと連携することが欠かせないことは事実でしょう。

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菊池浩史

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