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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

高齢者住宅も売買や賃貸ができる?

2021年1月24日 公開 / 2021年2月18日更新

コラムカテゴリ:お金・保険

コラムキーワード: まちづくりリスク管理相続対策

高齢者向けの住まいは実に多種多様です。特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの要介護者向けの公的施設に加え、民間施設には介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などがあります。また自立したシニア向けとして公的なケアハウスや、民間では住宅型有料老人ホームやサ高住などに加え、売買や賃貸ができるシニア向け分譲マンションがあります。

シニア向け分譲マンションとは、高齢者が安心安全に暮らせるように配慮されたバリアフリー完備の分譲マンションです。比較的お元気な富裕層が多く入居しており、高級マンションといったイメージでしょうか。一般の分譲マンションに比べ、共用部分と専有部分のバリアフリーがより完備しており、ソフト面では受付サービス以外にも、レストラン、シアタールーム、フィットネスなど共用施設が充実しています。

入居の年齢制限を設けていないシニア向け分譲マンションもありますが、実態は自立して生活が送れる高齢者が多く入居しています。介護や医療ケアに関する設備、あるいは人員など基準が設けられておらず、食事・入浴・排泄の介助といった介護サービスを施設として用意しているところは殆どありません。また認知症を患った場合の支援サービスなどもありません。介護や医療のサービスを受ける場合には、外部業者の訪問介護や、デイサービスと契約し利用することになります。この点は住宅型有料老人ホームや特定施設ではないサ高住と同じサービス形態と言えます。そしてシニア向け分譲マンションが他の高齢者向けの住まいと大きく異なるのは、権利形態が「(区分)所有権」という点です。
シニア向け分譲マンションには区分所有法が適用され、一般の分譲マンションと法的には同じ扱いになります。そのため、万が一介護が必要になり住めなくなった場合には、売却や賃貸をするなど不動産物件として活用することができます。また、所有者自身が他界した場合は家族へ遺産として相続することになります。このように資産としても活用できる点がシニア向け分譲マンションの大きなメリットと言えます。
そこには何も問題はないのでしょうか。入居者が何らかの理由によって住まなくなり、空き部屋を賃貸や売却することは、法的には何ら問題がありません。しかし、現実には入居者が高齢者に限定されている高齢者住宅です。シニア向けマンションというコンセプトでコミュニティなどが出来上がっている物件では、他の世代にとって価値は高くありません。つまり買い手や借り手が高齢者に限定されるため、資産としての流動性が劣るというリスクを抱えています。このことは知っておくべきです。

シニア向け分譲マンションは、区分所有法により管理組合が作られて、日常管理や修繕工事などに伴う意思決定が必要になります。高齢者が主体の管理組合で管理会社との調整や合意形成が円滑に進めることができるかといった不安があります。一般のマンションに比べ管理会社のサポートは手厚くなっている物件が多いとは言えますが、住宅資産としての流動性(賃貸や売却するときの条件)やマンションとしての管理運営方法(管理会社との役割分担など)について、十分に確認しておく必要があります。

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