不動産の相続をする場合と,遺贈を受ける場合では,税金が違うの?
相続税の節税策に要注意
1 安易な節税方法に対する最高裁判決
最高裁判所第三小法廷令和4年4月19日判決は、相続財産(不動産)の評価を、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け国税庁長官通達、いわゆる「評価通達」)の定める方法によってするのもよいが、評価通達の6項は、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は国税庁長官の指示を受けて評価する旨を定めているので、相続不動産を、評価通達の定める方法により評価すると実質的な租税負担の公平を著しく害し不当な結果を招来すると認められる場合は、所轄税務署長が評価通達6項により、鑑定評価額に基づき評価したことは、適法というべきであるとの一般論を述べ、不動産の購入による節税策をしなければ本件相続に係る課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、本件のように多額の銀行借入をして不動産を購入した結果、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になった事案では、評価通達6項を発動し、その評価方法を認めず、不動産鑑定士のした鑑定価額によって評価し直した所轄税務署長の行為を有効だと判示した。
2 後日譚
日本経済新聞2024年2月12日付け「相続節税に調査厳しく 財産評価の宝刀駆使」によれば、前記最高裁判決が後押しして、特別規定の「総則6項」を適用する例が急増し、国税当局による富裕層への相続税調査が厳しくなっているとのこと。
2012事務年度(2012年7月から13年6月まで)から21事務年度までの10年間で総則6項の適用は合計9件のみだったのが、22事務年度だけで6件に急増し、23事務年度も23年10月末時点で3件あるとのこと。借入金を使って極端に税負担を減らす不動産節税などに適用されたようである。