コラム
遺産分割のやり直しと税金問題
2015年10月9日 公開 / 2018年8月9日更新
Q 遺産分割をやり直すと、贈与税や譲渡所得課税がありなの?
A
1 遺産分割の合意解除の場合
遺産分割協議が成立すると,それにより遺産の帰属が決まってしまいますので,その後遺産分割協議を合意解除すると,その後の権利の移動は,遺産分割とはみられません。その結果、贈与税がかかってきたり、譲渡所得課税問題が生じますので,要注意です。
2 遺産分割が無効の場合
最初の遺産分割が無効な場合は,初めから遺産分割はなかったことになりますので、改めてする遺産分割は、分割後の再分割ではなく、贈与税や譲渡所得課税はありません。
国税通則法23条2項は、当初の遺産分割による贈与税の「申告・・に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」は、「確定した日の翌日から起算して2月以内」に更正の請求ができる、と規定していますので、判決による場合だけでなく、判決と同一の効力を有する和解や調停によって、遺産分割が無効とされた場合は、その後に改めてする遺産分割については、贈与税や譲渡所得課税はないことになります。
ところでです。もし、この国税通則法の規定を悪用する者が現れ、実は、無効ではない遺産分割を無効な遺産分割であるとして、なれ合い訴訟をしたり、和解をして、遺産分割を無効であることにし、やり直し分割をして贈与税や譲渡所得課税問題を避けようとしたら、うまくいくのでしょうか?
実は、税務署は、このような不逞の輩がいるとの前提で、遺産分割の無効をいう者に厳重な注意を払っています。
和解が判決と同一の効力があるといっても、訴えの提起前の和解(いわゆる即決和解)は和解とは見てくれません。判決であっても、なれ合い訴訟によるものと疑えるものは、遺産分割を無効とは見てくれません。
法律の規定は前述の通りですが、こと税金に関しては、税務署は、ひ、じょう~に、厳しいものがあります。ご用心、ご用心。
関連するコラム
- 相続税対策と株式の売却 2016-10-05
- 相続税対策と従業員持株会 2016-10-06
- 相続の限定承認をした場合の税金問題 2015-10-11
- 贈与にかかる税金4題 2015-10-10
- 不動産の相続をする場合と,遺贈を受ける場合では,税金が違うの? 2015-10-15
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。