第1章の4 インターネット検索
2 親会社の取締役にも責任及ぶ
大和銀行事件判決後、当時あった商法特例法が改正され、リスク管理システム(いわゆる内部統制システム)4項目が立法化された。
さらにその後福岡地方裁判所平成23年1月26日判決は、親会社の取締役2名に対し、子会社の従業員がグルグル回し取引(「循環取引」とも言う)という架空取引をしていたことに関し、
福岡地方裁判所平成23年1月26日判決は、親会社の取締役2名に対し、子会社の従業員がグルグル回し取引(「循環取引」とも言う)という架空取引をしていたことに関し、
「 (親会社 A 社の代表取締役と同じく業務担当取締役の被告2人は)子会社 B 社において従前から問題とされてきた在庫の増加・・・が改善されないことを認識していたのであるから,・・・B 社の在庫の増加の原因を解明すべく、親会社 A 社の取締役会を通じ,さらには子会社 B 社の取締役等に働きかけるなどして,・・・具体的かつ詳細な調査をし,又はこれを命ずべき義務があった・・・請求書や買付販売与信稟議書等の記載を検討すれば,・・・不当に高額な単価の取引があることや,同一の品名の商品の単価が異なる取引があることなどが明らかであったと推認され・・・グルグル回し取引による不適切な在庫処理が行われていることを発見し,取引の中止などの対策を取ることにより損害の拡大を防止することが可能であった・・・にもかかわらず,被告らは,何ら具体的な対策を取ることなく,子会社 Bb社ひいては親会社 A 社の損害を拡大させるに至ったのであるから,被告らには上記の内容の調査義務を怠った点に,忠実義務及び善管注意義務違反が認められる。」
との理由で、18億円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。
その判決を受けて、会社法の内部統制に関する規定に次の5号が追加され、現時点では、前記4項目を加えたこの5項目が、リスク管理システム(内部統制システム)の内容になっている(会社法348・会社法施行規則98)。
①取締役の職務の執行に係る情報の保存・管理に関する体制
②損失の危険の管理に関する規程その他の体制
③取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
④ 使用人の職務の執行が法令・定款に適合することを確保するための体制
⑤親会社・子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
そして、これらのリスク管理システムの整備は、今やすべての組織や法人の義務にもなっている。