使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
厚生年金に加入させなかった会社の責任事例
1.年金減額分の6割を賠償責任額とした事例(4割相当額は従業員の責任額としたもの)
大阪地方裁判所平成28年5月26日判決は、訴訟提起時点で既に65歳を超えていた元従業員Aに対しては,実際の年金受給額と仮に未加入の時点において年金を納めていたならば受給できたはずの年金額との差額を年間損害額であると認め,将来の損害額については、平均余命までの期間にライプニッツ係数を乗じて中間利息を控除した金額としたうえで、Aも社会保険に未加入であったことを十分認識しつつ未加入の状態を継続させたことについて本人に落ち度があるとして,4割の過失相殺をしています。
2.遠い将来の年金受給に関する損害賠償額に関する裁判例
東京地方裁判所平成30年3月28日判決は、
訴訟提起時点で49歳であったBの事件については,将来の逸失利益は算定できないとして,年金の差額等については全く損害として認めず、ただ未加入であったことに対する精神的損害を5万円と算定してれを損害賠償額と認めました。その理由として同判決は、「就労期間約1年3か月の間,厚生年金保険及び健康保険に加入することができず,将来十分な保険給付を受けることができない不安を抱えつつ就労することを余儀なくされたといえる一方,他の従業員が加入していることを認識しながら加入を求めなかったことなど本件に現れた一切の事情を考慮すれば,Bの精神的苦痛を慰謝するための金額としては5万円が相当である」と判示したのです。