契約書知識 16 契約書の表記は公用文表記法による
Q 契約書に,押印はなく,署名のみがある場合,有効か?
A 有効だが、立証の点で弱い。
解説
1.法律の規定
民事訴訟法228条4項は、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定されていますので、署名のみでも有効です。
2.問題になる場合
問題となるのは,当該署名が本人又はその代理人の筆跡であると証明できるのか、また、書面への署名が本人又はその代理人の意思に基づいたものといえるのかどうか,という点です。
3.押印の場合は、二段の推定を受ける(判例)が、署名の馬合は、一段目の推定は受けない
契約書に押印がありますと,反証のない限り,
①当該印影は本人又はその代理人の意思に基づいて顕出されたものと推定され(一段目の推定),かつ、
②当該推定により文書全体が真正に成立したものと推定(二段目の推定)されることになります(こらは「二段の推定」と言われます。最判昭和39年5月12日,最判昭和43年6月21日)が、署名のみですと一段目の推定は受けません。
そのため、押印がなく署名だけの場合は、争われると、その署名が本人又は代理人がしたことを証明しなければなりません。
本人の署名であることを証明する絶対の方法はありません。
筆跡鑑定の信用力は十分ではありません。
当該署名が、本人の筆跡だという筆跡鑑定書と、そうではないという筆跡鑑定書の二つが証拠として出てくるケースもあるのです。
ですから、署名だけで済ますのは危険です。
可能な限り、押印はしてもらうべきです。
その印影について、印鑑証明書が付いていると、ベストです。