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位置指定道路を、近隣住人が自動車で通行できる場合の要件

2022年3月17日

テーマ:不動産法(売買編まとめ)

コラムカテゴリ:法律関連

最高裁判所平成9年12月18日第一小法廷判決は、次のように判示しました。

一 法律判断
建築基凖法42条1項5号の規定による位置の指定(以下「道路位置指定」という。)を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有するものというべきである。
 けだし、道路位置指定を受け現実に開設されている道路を公衆が通行することができるのは、本来は道路位置指定に伴う反射的利益にすぎず,その通行が妨害された者であっても道路敷地所有者に対する妨害排除等の請求権を有しないのが原則であるが、生活の本拠と外部との交通は人間の基本的生活利益に属するものであって、これが阻害された場合の不利益には甚だしいものがあるから、外部との交通についての代替手段を欠くなどの理由により日常生活上不可欠なものとなった通行に関する利益は私法上も保護に値するというベきであり、他方、道路位置指定に伴い建築基準法上の建築制限などの規制を受けるに至った道路敷地所有者は、少なくとも道路の通行について日常生活上不可欠の利益を有する者がいる場合においては、右の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、右の者の通行を禁止ないし制限することについて保護に値する正当な利益を有するとはいえず、私法上の通行受忍義務を負うこととなってもやむを得ないものと考えられるからである。
と、判示しました。

二 事実関係
なお、この件の事実関係は、次のように認定されております。
。 
1 本件土地は、昭和33年ころ本件土地周辺が大規模な分譲住宅団地として開発された際、各分譲地に至る通路として開設された幅員4メートルの道路であり、その頃、道路位置指定を受けた。
2 本件土地は、右の道路位置指定以後30年以上にわたり、Yらを含む近隣住民等の徒歩及び自動車による通行の用に供されている。
3 Yらは、自動車を利用する者であり、Yらがその居住地から自動車で公道に出るには、公道に通じる他の道路が階段状であって自動車による通行ができないため、本件土地を道路として利用することが不可欠である。
4 Xらは、本件土地の所有者である。
5 (1)Xらは、平成3年9月ころ、Yらを含む本件土地近辺の住民に対し、同年12月末日までに上告人らと本件土地の通行に関する契約を締結しない車両等の本件土地の通行を禁止するという趣旨のビラをまいた。
(2)Xらは、(1)と前後して、専らYらの自動車通行をやめさせる意図の下に、本件土地に簡易ゲート等を設置した。その結果、Yらは、自動車で本件土地を通行するたびに、いったん下車して右簡易ゲートを取り除かなければならなくなり、通行を妨害されている。
(3)Xらは、平成4年2月8日、Yらの所属する自治会に対し、同年12月末日をもって本件土地の通行を不可能にする工事を施工することがある旨を通知した。

三 二の事実関係に基づいて検討された内容
 Yらは、道路位置指定を受けて現実に道路として開設されている本件土地を長年にわたり自動車で通行してきたもので、自動車の通行が可能な公道に通じる道路は外に存在しないというのであるから、本件土地を自動車で通行することについて日常生活上不可欠の利益を有しているものということができる。また、本件土地の所有者であるXらは、Yらが本件土地を通行することを妨害し、かつ、将来もこれを妨害するおそれがあるものと解される。他方、右事実関係によっても、XらがYらの右通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情があるということはできず、他に右特段の事情に係る主張立証はない。
 したがって、Yらは、Xらに対して、本件土地についての通行妨害行為の排除及び将来の通行妨害行為の禁止を求めることができるものというべきである。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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