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コラム

意匠権を侵害した場合の賠償額などについて

2022年2月19日

テーマ:会社関係法

コラムカテゴリ:法律関連

Q1 当社が他社の意匠権を侵害した場合の賠償額は、どのような金額となるか?

Q2 当社の内装に関するデザインを業界雑誌やホームページに掲載した後に、他社が当社のデザインと同一または類似したデザインを意匠登録した場合、当該意匠権の無効を主張することは可能か。

A1 意匠法39条は、意匠権を侵害した場合の損害額の推定規定です。同条2項は、意匠権を侵害した者がその侵害行為により利益を受けている場合は、その利益の額が損害額であると推定する旨を規定しています。
 すなわち、仮に貴社が他社の意匠権を侵害して工事を行った場合、当該工事により得られた利益は、当該他社が被った損害額であると推定されます。この推定を覆す事情のない限り、貴社は当該他社に対し、当該損害額を賠償金として支払わなければなりません。

A2
 意匠登録出願前に頒布された刊行物に記載された意匠やインターネット等を通じて公衆に利用可能となった意匠は登録することができません(意匠法3条1項2号)。
 そのため、貴社のご指摘のとおり、貴社が業界雑誌等でデザインを公開した後に、当該デザインと同一または類似するデザインを意匠登録したうえ、意匠権侵害を主張する者に対しては、意匠権の無効を主張することは可能です。
 ただし、「意匠登録前に公開していたこと」を立証することは容易ではありません。
 業界雑誌に掲載された場合は、当該雑誌に刊行日が記載される等の方法により刊行日が明らかでなければなりません。また、ホームページ等で公開するものについては、いつの時点で当該デザインがホームページ等で公開されていたのかを明らかにするため、当該ホームページ等を印刷した書面について、公証役場において確定日付を取得する等の手続きを行う必要があると思われます。

参照
意匠法39条
(損害の額の推定等)
第39条 意匠権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の意匠権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物品を譲渡したときは、次の各号に掲げる額の合計額を、意匠権者又は専用実施権者が受けた損害の額とすることができる。
一 意匠権者又は専用実施権者がその侵害の行為がなければ販売することができた物品の単位数量当たりの利益の額に、自己の意匠権又は専用実施権を侵害した者が譲渡した物品の数量(次号において「譲渡数量」という。)のうち当該意匠権者又は専用実施権者の実施の能力に応じた数量(同号において「実施相応数量」という。)を超えない部分(その全部又は一部に相当する数量を当該意匠権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量(同号において「特定数量」という。)を控除した数量)を乗じて得た額

二 譲渡数量のうち実施相応数量を超える数量又は特定数量がある場合(意匠権者又は専用実施権者が、当該意匠権者の意匠権についての専用実施権の設定若しくは通常実施権の許諾又は当該専用実施権者の専用実施権についての通常実施権の許諾をし得たと認められない場合を除く。)におけるこれらの数量に応じた当該意匠権又は専用実施権に係る登録意匠の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額

2 意匠権者又は専用実施権者が故意又は過失により自己の意匠権又は専用実施権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、意匠権者又は専用実施権者が受けた損害の額と推定する。

3 意匠権者又は専用実施権者は、故意又は過失により自己の意匠権又は専用実施権を侵害した者に対し、その登録意匠又はこれに類似する意匠の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。

4 裁判所は、第一項第二号及び前項に規定する登録意匠の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額を認定するに当たつては、意匠権者又は専用実施権者が、自己の意匠権又は専用実施権に係る登録意匠の実施の対価について、当該意匠権又は専用実施権の侵害があつたことを前提として当該意匠権又は専用実施権を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該意匠権者又は専用実施権者が得ることとなるその対価を考慮することができる。

5 第三項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、意匠権又は専用実施権を侵害した者に故意又は重大な過失がなかつたときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。


(過失の推定)

第40条 他人の意匠権又は専用実施権を侵害した者は、その侵害の行為について過失があつたものと推定する。ただし、第十四条第一項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権又は専用実施権の侵害については、この限りでない。


(特許法の準用)

第41条 特許法第百四条の二から第百五条まで(具体的態様の明示義務、特許権者等の権利行使の制限、主張の制限及び書類の提出等)、第百五条の二の十一から第百五条の六まで(損害計算のための鑑定、相当な損害額の認定、秘密保持命令、秘密保持命令の取消し及び訴訟記録の閲覧等の請求の通知等)及び第百六条(信用回復の措置)の規定は、意匠権又は専用実施権の侵害に準用する。 

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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