従業員との間の競業避止契約は、代償措置がとられていないと、無効
1.意匠法改正の経緯
令和2年4月1日施行の改正前の意匠法は、工業製品のうち可搬性のあるもの(動産)についてしか、意匠権の対象にはしていませんでした。しかし、この制度の下では、同じ家屋であっても、可搬性のある組立家屋については意匠権を認め、可搬性のない家屋には意匠権を認めないといった矛盾が生じます。
この矛盾を解消するため、また、可搬性のない店舗の外観や内装等にもブランド価値のあるものがあるのでそれを保護するため、これらについても意匠権を認めることにしました。
なお、この法改正は、アメリカの有名企業等からの強い要求があり実現したと言われています。
2.調査対象が広がる
これにより他社の意匠権の侵害を防止するための調査は、広範囲なものになります。その調査方法として、特許庁作成の調査方法マニュアルが作成されております。
なお、意匠法24条2項は、「登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。」と規定するのみで、具体的な判断方法を示していません。そのため、意匠の類似判断を行うことには、困難が伴うものと思われます。
3.新しい産業の創出効果
今回の改正意匠法の施行により、顧客のためのブランド創出を目的に、オフィスデザイン(建築物の外観デザイン、机やいす等の複数の物品等の組み合せや配置、壁や床等の装飾により構成される内装デザイン)等、全体として統一的な美感を起こさせる意匠を考える産業が生まれるのではないかと思われます。
4.その他
意匠登録がなされた場合は、意匠権は意匠登録出願日から25年間存続します(意匠法21条1項)。この期間中は、他社が当該意匠権と同一又は類似する意匠を実施(製造・販売・使用等)することはできなくなり、意匠権は守られます(意匠法26条1項)。