コラム
2021/01/17 能力のあらわし方に、三態様あり
2021年1月18日
2021/01/17 能力のあらわし方に、三態様あり
1.一つ目は、「能ある鷹は爪を隠す」
この諺は、本当に実力のあるものは、やたらにそれを現さないものだという意味(広辞苑)の言葉で、真に才能ある者は、かくあるべしという褒め言葉でもある。
2.二つ目は「嚢中(のうちゅう)の錐(きり)」のまま
「嚢中の錐」とは、嚢中(布の袋に入った状態)の錐は、自然に囊を破って頭を出すように、才能は時間の経過とともに周囲の人に知られるようになるという諺である。
才能ある者をとくに褒めるわけではないが、才能ある者の才能は、やがて周囲の人に分かってくるという自然の理をいう言葉である。
3.三つ目は「鶏肋」(けいろく)
「鶏肋」とは、鶏の肋骨のことだが、「後漢書」に鶏肋という言葉が出てくる一挿話(エピソード)が書かれている。
すなわち、西暦219年曹操が劉備玄徳から漢中を奪うべく軍を起こしたものの戦線が膠着して、攻めても効なく、引くには引けないという気持ちになってしまった折り、たまたま曹操に食事として鶏肋を煮た汁物(スープ)が出された。
曹操はそれをしゃぶりながら、鶏肋は食べても腹は満たされないが、捨てるには惜しいものだ。これは今の曹操軍の置かれた立場と同じだと考えたところに、その夜の合い言葉を何とするか?と家臣より尋ねられて、思わず“鶏肋”と答えた。
これにより、当夜の合い言葉が“鶏肋”であることを知った楊修(よう しゅう)なる者、曹操の考えていることが理解できた。理解できただけでなく、やがて曹操は軍を撤退すると命令するだろうと考え、自分の陣の撤退の準備を始めた。
するとこれを知った他の武将は、楊修に、何故陣を払うのかと質問した。そこで、楊修はその理由を他の武将に説明した。才人であることの声望のあった楊修の言葉に納得した他の武将も陣を払い撤退の準備を始めた。
曹操はそれを知って驚いた。そして、その原因をつくった楊修を斬首したのである。
愚かなのは楊修である。才人、才に溺れ、身を滅ぼしたからである。
楊修は、曹操が鶏肋という言葉を使ったことから、曹操の思いを知ったが、軍令を待たず軍事行動を起こすことの意味や効果にまでは考えが及ばなかったようだ。
まさに、才人才に溺れる図を描いてしまったのだ。
ここから、「鶏肋」という言葉は、才人、才に溺れる愚をイメージする言葉になったのである。
ロータリアンは、皆、能ある鷹は爪を隠すほどの慎ましさを備えているか、自然に周囲に分かる才能は、隠しもせず、ひけらかすこともしない自然体で生きるか、いずれかだが、間違っても他人の意思を臆断して、先回りの行動を採る楊修のような者はいないと思われる。
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