使用者のための労働問題 普通解雇と懲戒解雇の違い
Q 当社は、公正な人事考課制度を設けようと思っています。気を付けることは何ですか?
A
1,公正な人事考課をする義務と違反した場合の効果
使用者は労働者の納得が得られるよう公正に人事考課をする責務(注意義務)を負っており、この注意義務に反した恣意的な人事考課に関しては,人事権の濫用(労働契約法3条5項)として、その人事考課に基づく解雇、降格などの処分が無効とされたり、不法行為(民法709条)責任(損害賠償義務)も生じます。
2,公正な人事考課の要件
(ア)人事考課の手続面としては,
(a)透明性・具体性のある評価項目・基準の整備と開示
(b)評価の納得性・客観性を保つための評価方法(多面的評価,評価の手順の開示)の導入
(c)評価を処遇(昇降給・昇降格・昇進・育成・異動)に反映させるための明確なルールの整備
(d)それらルールの労働者への開示(フィードバック)
(e)紛争処理制度の整備
が必要です。
特に注意すべき点
①各種の差別禁止規定(労働基準法3条,男女雇用機会均等法6条,労働組合法7条)に反して(労働者の国籍、信条又は社会的身分、性別、組合加入の有無を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならないこと。
②能力・成果と無関係のステレオタイプな属性(学歴・雇用形態など)を理由に低い査定を行ってはならないこと,
③上記のような客観的基準を無視した主観的(感情的)評価をなしてはならないこと,
④初期の目標設定が高すぎる場合や,十分な能力開発の機会を与えないまま低い評価を行ってはならないこと,
⑤労働者の適性や希望(キャリア)を考慮しないまま配置しつつ低い評価を行ってはならないこと
(イ)評価項目
成果・意欲・努力・能力・職務行動を含めたトータルな観点で評価をすること
特に、労働者が成果に向けて誠実に労働(努力)したか否かというプロセスも加味した評価をすること