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新著 第12章 独禁法

2019年12月12日 公開 / 2019年12月13日更新

テーマ:菊池と後藤の会社法

コラムカテゴリ:法律関連

第12章 独禁法

会社法の世界は、企業活動の世界である。
企業活動には、独禁法が適用される場合がある。また、独禁法の補完法といわれる下請法が適用される場合がある。
そこで、本章では独禁法、次章では下請法を解説するしだいである。

1.独禁法の誕生
独禁法、正しくは「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」は、戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の主導により、アメリカの反トラスト法を参考にして作られた法律

2.独禁法は極めて重要な法律
独禁法を、経団連は「経済憲法」といい、判決は「経済活動に関する基本法」というほど、重要な法律である。

3. 独禁法は難解な法律(証券会社の損失補填事件)
取締役が過失なくして知らない間に、会社が独禁法に違反することのある法律だ。

4. 独禁法が対象にするもの
私的独占
不当な取引制限
事業者団体規制
不公正な取引方法
企業結合規制

5. 企業結合規制の例
FFGと十八銀行の経営統合

6.「不当な取引制限」(カルテル)と「不公正な取引方法」例

7.独禁法の監督官庁
公取委。これは国家公安委員会と同等の格付けになっている、独立性の高いいわゆる3条委員会(国家行政組織法3条)。課徴金を課すことのできる強力な権限を持っている行政機関。そのため「権限官庁」といわれることがある。企業にとっては少し怖い、その意味で、鬼門意識があるかもしれん官庁だ。

8.課徴金
以前は、マスコミでは、よくカルテルに対し課徴金が課せられた事例が紹介されていた。しかし、最近では、下図のように、非常に減少している。 
 
9. 海外に進出する企業を襲うカルテル規制

10.優越的地位の濫用
優越的地位の濫用に課徴金が課されるようになったのは、2010年(平成22年)からだが、その第一号事件の課徴金は、2億2000万円少々だったなあ。

11. 課徴金制度と令和元年独禁法改正法による見直し
改正前は、最長3年間遡ってその間の実行期間中の違反による売上額・購入額に原則10%を乗じて計算していたが、それを10年間遡ることがきることにしたほか、この売上額等に加えて、子会社等を道具にして違反行為をさせた売上額とか、談合金(談合によって入札を譲った事業者が得る金銭等)等も算定基礎に追加されることになった。  

12. 課徴金の減免措置(リーニエンシー)
課徴金減免制度は、2005年(平成17年)の独禁法改正の時にできたが、減免率を一律に定めていた。令和元年の改正独禁法は、公取委の調査開始前に最初に独禁法違反を自主申告した企業には、課徴金を全額免除するが(これは従来どおり)、2番目以降に自主申告した企業の場合は、公取委への調査の協力度合いによって、課徴金を減免率が変わる「裁量型課徴金」制度にした(日経2019年6月19日「調査協力の課徴金減免拡充 改正独禁法が成立」)。
課徴金算定方法の改正では、課徴金が大きくなる可能性が出たが、一方でカルテルなどの調査に協力した企業には課徴金減免率を大きくするという、アメとムチの政策と評しうる。実は、この制度改正によって、前記の道路舗装カルテ事件では、当初600億円の課徴金額が398億円に減額されるという恩恵を受けた。このような裁量による課徴金の減額制度は、最近の海外での立法姿勢でもある。
  
13. 事前に相談する道(転ばぬ先の杖)
14. 確約制度の創設(令和元年改正独禁法)
独禁法が分かりにくい条文が多いことから、事業者はうっかり違反するおそれがある。そこで、公取委の方から独禁法に違反する事実があると考える場合に、当該事業者に対して、「排除措置計画の認定を申請できる旨の通知」を出すことのできる制度だ。事業者がそれをした場合で、公取委がその計画内容が当該違反被疑行為を排除するのに十分であり(措置内容の十分性)、かつ確実な実施が見込まれると判断したときには(措置実施の確実性)、排除措置命令および課徴金納付命令は課さないという制度だ。
確約制度は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP11)の中に、各締約国がこの制度を導入する旨の条項が盛り込まれたので、我が国もそれ従って制度化した。この制度によって、各定約国の企業は、安心して投資とか事業展開することができるようになる。我が国でもこれに対応して、独占禁止法の改正が行われた(2016 年3月8日に閣議決定)。 
ヨーロッパでは、独禁法違反の被疑ケースの半分ぐらいこの制度で解決されているそうなので、我が国でも大いに利用されるのではないかな。すでに、オンライン宿泊予約サイトを運営する事業者が宿泊事業者に最安値保証を求めたケース(不公正な取引方法の疑い)において、公取委が初めて確約手続きを適用している(公正取引委員会19/10/25「最近の独禁法関連ニュース」)。
確約手続は、私的独占および不公正な取引方法について適用され、カルテルや入札談合は対象にならない。もともと、この制度は「うっかり違反」を救済する性質のものだからだ。
   
15. 独禁法と中小企業協同組合
16. 独禁法と農協

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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