会社法の歴史 1 はじめは「商法」であった 「商法」はドイツ法に倣ったものだった。そして、戦後・
(新著概要)
第2章 M&A
蛇(じゃ)は寸にして人を呑むという。
今、企業は、好むと好まざるにかわらず、M&A知らずして会社経営はできない時代になっている。しかし、M&Aには恐るべきリスクもある。
第1節 概論
1.M&Aの意味
M&Aは「合併・買収」と訳されている。1997年(平成9年)にホールディングス(純粋持株会社)の設立が解禁された(第1章参照)。以後、急激にM&Aが増えた。
2.M&Aの数
わが国におけるM&Aの件数は、3818件であった。2019年4月のM&Aの数は、前年同月比23%増加したと報じられた。
3.M&Aをする目的と効果
M&Aは、経営戦略の一環として、①事業規模の拡大と強化、②事業の選択と集中、③経営の効率化・スピード化、④新規事業への参入、⑤海外進出の手段等がある。
4.M&Aに潜むリスク
①契約リスク
N証券の場合は、破綻したリーマン・ブラザーズの欧州・中東部門を買収したとき、何千人という超高給取りの従業員の報酬契約をそのまま引き継いだことから、多額の損失が発生した。
②企業秘密や個人情報の流出・漏洩のリスク
M&Aでデューデリジェンス(資産査定)をするとき、相手方企業の営業秘密、取引先、ノウハウ等が開示されるので、その危険がある。米フェイスブックの場合、個人情報を最大で8700万人分流出させたとして、5400億円の制裁金(それまでで最大)が課された。
③以下略
5.M&Aの対価がM&Aの成否を決める
買収対価は一般的には企業価値をEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)で割った数値が8〜10倍が適正とされているが、日本電産は、案件によってはこれを7倍以下で買う(要は高値づかみをしない)ことにしているという。
6.M&Aの金額と傾向
新聞報道によれば、武田薬品工業(以下「武田」)がしたシャイヤーの買収には6兆2千億円の金額を必要としたようだ。・・・
7.MBOと上場廃止の理由
MBOは、「Management Buyout」の略語で、経営陣が会社を買収することをいう。
MBOによって買収した会社を上場廃止にするのは、
①株式を発行して資金を調達(エクイティファイナンス)する必要のない会社
②敵対的企業買収者による会社の乗っ取りのリスクのある会社
③株主から干渉されずに、会社の中長期的な経営計画を立てることを望む会社
④上場維持費用と人材を、他の部門へ振り向けることを望む会社など
8.特別支配株主による株式等売渡制度とは
経営陣がMBOで対象会社の株式(議決権)の90%以上を取得すると、特別支配株主となるので、特別支配株主として残りの株式全部を強制的に買い取ることができる。
第2節 敵対的企業買収と防衛策
1.敵対的企業買収の意味
経営陣の意思に反する企業買収の意味として使われているが、従業員、顧客などのステークホルダーや株主にとっては、必ずしも敵対的とはいえない企業買収もあ。
2.買収防衛を意識するようになった時期と背景
経営陣が買収防衛策に目覚めたのは、2005年のライブドアによるニッポン放送への敵対的買収のときだ。それを機に、わが国の多くの企業が買収防衛策の導入に走った。
3.買収防衛策が認められなかった例
「いなげや・忠実屋事件」がある。・・・東京地裁が「いなげや」と「忠実屋」双方の第三者割当増資を差し止めたからだ。
4.買収防衛策が認められたケース
有名なケースでは、ブルドックソース(甲)対スチール・パートナーズという投資ファンド(乙)の戦いがある。・・・
5.株主平等の原則と買収防衛策
会社を食い物にするような買収者株主は、差別されてもしかたがない面がある。
6.買収防衛策が有効とされる場合の基準
買収防衛策が有効だとされる場合の基準の例
①「グリーンメイラー」(ドル札の緑色と脅迫状を意味するブラックメールを合わせた造語)という。 以下略
7.買収防衛策を定めた場合の措置
8.買収防衛策として多いのはポイズンピル(毒薬条項)
第3節 「のれん」と「負ののれん」
1.のれんの意味
M&Aで会社を買収したときの買収対価と買収先企業の純資産との差額をいう会計用語。「繰延資産」の一つ。日本の会計基準では、「のれん」は、定額を償却を要し、減益要因になる。のれんという減益要因になる金額が世界中で約770兆円もあるという。
2.日本の会計基準と国際会計基準
3.「負ののれん」
「負ののれん」は、営業利益に計上され、その利益は、「負ののれん益」といわれる。
4.武田薬品工業が乗り越えなければならない壁