出資比率は絶対ではない(出光興産事件)
7.たとえていえば、花王方式がよい
菊池:ボクも同感だ。わずか数名(3名以上)の取締役だけで、自分達とその仲間の執行役の報酬を決めることができるという制度には、問題があるように思うからね。とは言うものの、ボクは、社外取締役が過半数を占める委員会を、法的拘束力のない会社の諮問機関として置くことは良いことだと思うが、そのような会社はないのかい?
後藤:あるよ。最新の実態調査によると、機関設計は監査役会設置会社のままで、指名委会社における報酬委員会や指名委員会と同じような委員会を、諮問機関として置いている会社が、上場会社の半数程度に増えているよ。この速さから推して、この方式が上場会社の機関設計の主流になるだろうなあ。
菊池:その諮問委員会としての報酬委員会や指名委員会というのは、指名委会社における委員会のような権限はないよねえ。
後藤:当然そうだよ。監査役会設置会社に置く委員会は、名称のいかんを問わず、法の規定にはない委員会なのでね、指名委会社における委員会のような権限は一切認められないよ。
菊池:では、監査役会設置会社でありながら、諮問機関として委員会を置いている会社に、どういう会社があるのだい?
後藤:例としては花王を挙げることができるよ。花王は、監査役会設置会社であるが、取締役会の中に「取締役選任審査委員会」と「取締役・執行役報酬諮問委員会」を置いているのだよ。監査役会設置会社でありながら、諮問委員会として、このような委員会を置くのは、取締役選出やその報酬の決め方の透明性や公平性を担保するためであると同時に、指名委会社におけるような強権を、委員会に与えない、バランスのとれた良いやり方ではないかと思うよ。なお、花王は、日本取締役協会から、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」の2017年度大賞企業に選ばれるほどの会社だ(もっとも、花王の受賞と機関設計の持ち方とは無関係だが。)。さらになお、花王は、自己資本利益率ROEとESG投資スコアを乗じて算出される指標となるR0ESGの数値で、日本企業の中で最高値を得ている企業だよ(この意味は、別の機会に詳述予定)。
菊池:そういえば、花王は、株主への報告書に、「当社は、(コーポレートガバナンスとして)監査役会設置会社を選択しています。監査役会設置会社では、監査役は取締役会において議決権を有しないため、過去の決定に縛られ保守的になることなく取締役会の決定・取締役の職務執行について客観的な監督が可能であると考えています。」と書いているように、監査機関についても、指名委会社における監査委員会よりも、監査役会の方が良いとしているよ。
後藤:ボクも、監査機関は、監査役会の方がよいと思うよ。
菊池:わかった。ボクも、機関設計としては監査役会設置会社がいいが、その上で諮問機関として「指名諮問委員会」や「報酬諮問委員会」を置く方式(たとえて言えば花王方式)なら、国民一般に受け入れられると思うねえ。法律上の指名委員会設置会社にしてしまえば、株主の意思が無視されるリスクがあり、一般国民は不安を持つと思うのでね。現在の上場会社の半数以上が、この方式をとっていることを、君から聴いて安心したよ。