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株主の復権

菊池捷男

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テーマ:菊池と後藤の会社法

株主の復権

1.所有と経営
 以前は、株式会社の仕組みを説明するのに、「所有と経営の分離」という概念が使われた時代があった。すなわち、会社を所有するのは株主であり会社を経営するのは取締役であるという形式論である。そのような二元論が語られたのは、まだ株式会社経営の実態がよくわからなかった時代だったからかもしれない。

2.所有と経営と支配
 しかし、その後つい最近まで、「所有と経営と支配」という言葉が使われる時代になった。すなわち、会社を所有するのは株主であるが、会社の経営は取締役がし、かつ、会社の支配も取締役がするという論である。これは取締役の力が強くなり、その実態に目を向ければ、取締役は会社の経営だけでなく会社の支配もしている姿が見えてきたからであろう。

3.支配の意味
 では、いかなる事象が「取締役の支配」であるのかというと、取締役がひとたび代表取締役(CEO)になって経営の実権を握るや、他の取締役も社員も、その支配下に置き、例えば、株主総会において選任する取締役も監査役も、その代表取締役が一存で決めうること、後任の代表取締役まで、事実上指名して決める実権をもってしまったこと、それだけでなく、自分自身を含む取締役の報酬も監査役の報酬も、退職慰労金すら、その代表取締役が、他の取締役にも知らせなくてすませる方法(株主総会での一任決議と取締役会での一任決議)で、決めてしまえるほど、さらには会社の所有者であるはずの株主への配当も思いのままに決める実権を握り、業績が悪くても解任・解職されることのない安全な地位を獲得したからである。

4.株主の復権
 2019年6月の株主総会では、多くの上場会社で、株主が声を挙げ始めた。LIXILグループの株主総会では、取締役の選任をするのに、会社提案の取締役候補者の一部を選任否決し、株主提案にかかる取締役は全員選任可決し、ついにそれまでのCEOを引き下ろしてしまった。ここでは、株主が本来の実力を見せつけたわけだが、その株主とは、いわゆる物言う株主(アクティビスト)だけでなく、国内の事業会社も、それまでのCEOの経営姿勢に反対したのである。

 このような株主総会を見ると、コーポレートガバナンス改革の一つである株主の復権が、実現しつつあるというか、実現しやすい時代を迎えたといえるであろう。

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菊池捷男(弁護士)

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