コラム
4 相続放棄問題 単純承認をしたものとみなされる場合
2018年12月12日
4 相続放棄問題
【条文】
(相続の放棄の方式)
第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述(法定単純承認)
(法定単純承認)
第921条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
ⅰ 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
ⅱ 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
ⅲ 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。
【解説】
第921条にある3の理由のいずれかがあれば、相続放棄は無効になります。
理由の第一が「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」です。
ここで「相続財産の処分」というのは、相続債権者の権利を害するような相続財産の処分をいいます。
ですから、換価価値のない不要品の廃棄などは、相続財産の処分にはなりません。被相続人名義の自動車の廃車手続、被相続人が借りていた借家の賃貸借契約の解約などは、相続財産の処分にはならないのです。
さらに、保存行為や民法602条に定める期間(土地の場合で10年、建物の場合で3年)を超えない範囲で賃貸することも法定単純相続とは扱われません。
法定単純承認とされる第二は、相続人が自己のために相続の開始のあったことを知った時から3か月内に「限定承認又は相続の放棄をしなかったとき」です。
相続の単純承認とされる第三は、相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときです。これも、相続債権者の権利を害する場合のことですから、資産価値のない動産の形見分けなどは、この隠匿などにはあたりません。
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