第2節 相続分 1法定相続分
3 共同相続の効力
【条文の紹介】
(共同相続の効力)
第898条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
第899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
(1)共同相続の意味
共同相続とは、相続人が数人ある場合の相続のことをいいます。
(2)共同相続における権利関係は、遺産共有
共同相続にあっては、相続財産は全相続人の共有に属することになります(898)が、ここでいう「相続財産」というのは、相続開始時点で、特定の相続人の財産になっていない財産をいいます。
具体的には、遺言によって取得者が決まっている財産以外の遺産のことです。
この共有は「遺産共有」でいわれます。
その共有割合は、相続分の割合になります(899)。
(3)遺産共有状態を解消する道
遺産共有状態を解消するには、遺産分割の方法によることになります(ただし、可分債権は、後述のとおり、各相続人が、それぞれの相続分で、分割取得しています。)
【判例引用】
最高裁判所大法廷平成28年12月19日決定
相続人が数人ある場合,各共同相続人は,相続開始の時から被相続人の権利義務を承継するが,相続開始とともに共同相続人の共有に属することとなる相続財産については,相続分に応じた共有関係の解消をする手続を経ることとなる(民法896条,898条,899条)。そして,この場合の共有が基本的には同法249条以下に規定する共有(注:共有物共有のこと)と性質を異にするものでないとはいえ,この共有関係を協議によらずに解消するには,通常の共有物分割訴訟ではなく,遺産全体の価値を総合的に把握し,各共同相続人の事情を考慮して行うべく特別に設けられた裁判手続である遺産分割審判(同法906条,907条2項)によるべきものとされており,また,その手続において基準となる相続分は,特別受益等を考慮して定められる具体的相続分である(同法903条から904条の2まで)。・・・