コラム
相続放棄をする前にした行為が、相続放棄を無効にする場合
2018年9月14日
Q
次のような行為をした場合、相続放棄はできなくなりますか?
① 被相続人名義の自動車の廃車(中古車で財産価値は全くなし、ローン完済、税金滞納なし)
② ①の自動車を停めていた駐車場賃貸借契約の解約
③ 被相続人が私用に使っていた工具類の自宅への移動(念のため調べたところ、財産価値は全くないそうです。)
④ ③のものを保管するために借りていた小型トランクルームの解約
A
民法921条は、「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は、相続の単純相続をしたものとみなすと定めています。
相続財産とは、無論、財産性のあるものをいいますので、①から④までの行為は、これにあたりません。
この規定は、相続債務の債権者を保護するための規定です。
すなわち、相続人が相続放棄をすると、その相続人は相続債務を支払わなくともよいことになります。
その場合、債権者にとっては、相続財産のみが債務を支払ってくれる財産(「引き当てとなる財産」)になりますので、その相続財産が相続人に処分されたのでは損害を受けることになります。
そこから、相続債務の債権者を害する行為をした相続人については、相続放棄を認めないことにしたのです。
あなたの場合、債権者を害するような相続財産の処分にはなりませんんで、相続放棄はできます。
ただ、①から④までにした行為については、家庭裁判所に提出する相続放棄申述書に書き、証拠写真を添付しておくべきです。
将来、債権者から争いにされたときに、裁判所もこのことはよく知っているよ。その上で、相続放棄を認めてくれたよ。と言い開きができるようにするためです。
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