相続 最高裁破棄判決例 遺贈の放棄ではない,遺贈の効力喪失の理屈
1 裁判例は、早くから認めている
東京高裁平成10・3・25判決は、遺言で、生命保険金の受取人の変更は有効であると判示しています。
本来、保険金受取人を指定するのは、保険契約締結の時ですが、保険金受取人を誰にするかは、事実上保険契約者(本件ではあなた)の意思で決めうるものですので、保険会社がそれに反対する利益もないことから、遺言書で、その変更をしても有効だと判示したのです。
2 保険法の改正のときに認める規定が置かれる
平成20年法律第56号の保険法では、1の裁判例もあること、遺言による保険金受取人の変更について保険者がそれを拒否する利益もないことから、次のような規定を設けて、遺言による保険金受取人の変更を可能にしました。
参照条文
保険法第44条 保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。
なお、次の条文も参考になると思います。
(保険金受取人の変更についての被保険者の同意)
第45条 死亡保険契約の保険金受取人の変更は、被保険者の同意がなければ、その効力を生じない。 → これにより被保険者が知らない間に生命保険に加入していたという問題は生じないことになります。
(保険金受取人の死亡)
第46条 保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。
(趣旨)
第1条 保険に係る契約の成立、効力、履行及び終了については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 保険契約 保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付(生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約にあっては、金銭の支払に限る。以下「保険給付」という。)を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)を支払うことを約する契約をいう。
3 インターネットに残っている、1や2と矛盾する情報
インターネットでは、次のような記事が載っていますが、これは保険法44条に反する内容になっています。これは保険法施行前の約款が載っているものと思われます。
【インターネット情報】
「共済金の受取人はご加入者本人です。ただし、死亡共済金の受取人は、ご加入者の死亡時点における(1)~(12)の順序で上位の方となります(以下省略)」