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菊池捷男

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菊池捷男(きくちとしお)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

コラム

  わが国で指名委員会等設置会社が不人気である理由

会社関係法

2018年5月15日 / 2018年5月22日更新

1不人気である実体
日本取締役協会(JACD)の調査によれば、2018年3月現在、指名委員会等設置会社は、東証1部上場会社で60社、2部上場会社ではわずか3社しかない。この制度が導入された2003年以後15年も経つのに上場会社のわずか2%しかないのである。これに反し、2016年に導入された監査等委員会設置会社は、導入2年で、22%を越えている。
いかに指名委員会等設置会社が不人気であるかは、明らかである。

2不人気の理由
①日本の国情に合わないことと、②日本企業がこれを採用するインセンティブが働かないこと、それに③CEOの報酬が高いこととされている。
①と②については、すなわち、アメリカの要求で導入した経緯を持つ、指名委員会等設置会社は、取締役会の中に、「指名委員会」「報酬委員会」「監査委員会」の3委員会を設置しなければならない。この場合、「指名委員会」は、会社の取締役を指名する委員会であり、「報酬委員会」は取締役個々人の報酬を決める委員会であり、「監査委員会」は会社の監査をする委員会であるが、これら委員会の委員の過半数は社外取締役でなければならないことになっている。
つまるところ、会社の取締役は、社外取締役という社外人が決め、取締役の個人別の報酬も社外人が決めているのであるから、これらは、我が国の制度にも慣習にもない制度であった。このような制度が、突然アメリカからの要求で導入したことによる抵抗感もあった上に、この制度を導入するメリットが感じられないからであると思われる。
③については、5で解説する。なお、CEOの報酬が高い理由は6に書いている。

さらに、次の事情もあると思われる。すなわち、わが国の会社の取締役は、昨日のコラムに書いたように、長い終身雇用制の下で、従業員が出世した後の最終ポストなのであるから、その取締役選任基準は、おのずとアメリカ流取締役の選任基準と反するはずである。となると、日本企業が指名委員会等設置会社制度を採用しない理由も明らかというべきである。

3監査委員会設置が増えた理由は、過去のコラムで詳説している。
4アメリカが、日本に対し、指名委員会等設置会社制度の導入を求めた理由
(1)アメリカ企業には、わが国の監査役会はないこと
(2)指名委員会等設置会社は、「監督と執行の分離」という理念のもとに、①取締役会は、会社法に定める重要事項と中長期の経営の基本方針を決定するだけで、業務執行はせず、②業務執行は執行役に任せるが、執行役の選任・解任権を取締役会で握りその監督をする機関であることから、これが裁量の制度だと考えたのかもしれない。


5指名委員会等設置会社における社外取締役の報酬の高さ
これは、制度論ではないが、上場会社が指名委員会等設置会社になった場合、社外取締役は最低でも6名設置することになるが、アメリカのCEOの報酬は、日本の代表取締役社長の報酬と比べると、驚くほど高い。アメリカのCEOの中には、かつては、年間2百億円を超える報酬を得ていた者もいたが、今日でも下がったとはいえ、数十億円を得ているものもいる。10億円台はザラのようである(ストックオプションによる利益を含む)。日本の大企業であるトヨタの社長が3億円に満たないのと比べると、あまりに差が大きい。
なお、CEOは、Chief Executive Officer(最高経営責任者)の略である。ちなみに、COOは、Chief Operating Officer(最高執行責任者)略、CFOは、Chief Financial Officer(最高財務責任者)の略である。これらの文字は、もちろん、日本の会社法には出てこない。ただし、日本版コーポレートガバナンス・コードには日本では、CEOの文字が見える。

6 指名委員会等設置会社における構造上の問題点
最大の問題点は、会社法が執行役と取締役との兼任を禁止しなかったことである。執行役は、社外取締役にはなれないが、他の常勤取締役と兼任することができる。そこで、執行役のほとんどが取締役を兼務し、取締役会の議決権を執行役が握った上で、指名委員会および報酬委員会の委員になったらどうなるか(なお、監査委員会の委員にはなれない。会社法400条4項)。濫用の危険はないのか?
 この点は、アメリカの指名委員会でも、取締役兼務の執行役が実質上の決定権を握っていることが問題とされている(中田直茂「ディスクロージャーの正確性の確保とコーポレート・ガバナンス(上)(中)(下)」商事法務1619号17頁、1620号9頁、1621号37頁)。アメリカでは、CEOとCOOが会長社長を兼ねるケースが多いという。
もう一つの問題点は、執行役は、従来の監査役設置型の会社と比べて、取締役会決議の事項のうち一定の事項を除き、広範囲に重要な事項について、取締役会から受任される結果、執行役の権限が強くなりすぎることである(416条4項)。これが、CEOの報酬が非常に高い原因になっているのである。

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