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総代と理事の兼任問題

菊池捷男

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テーマ:民法雑学

1 総代制度について
 総代は、農業協同組合法、生活協同組合法、信用金庫法、中小企業等協同組合法などに置かれた制度ですが、この制度は、組合員が多数あり、組合員全員が参加して決議できる場所の確保が困難であることを考慮して、組合員に代わって議決権を行使する組合員の代表者的立場の者として置かれた制度です。
 したがって、総代と組合員の関係は、委任関係とみられ、総代は、組合員のために、善管注意義務を負うことになります(民法644条)。
 
2 善管注意義務の内容
 総代に課せられた善管注意義務は、総代を選出した地区の組合員のために、議決権を行使することですが、それとは別に、総代には、総代会での理事の選任・解任(議案に対する議決権の行使)を通して、理事の業務執行の適正性を監督する役目(経営監督機能)を担っています。

3 総代が理事になることができるか。
法的には可能です。総代制度を採用した法律は、総代と理事の兼任を禁じていないからです。
 しかしながら、総代と理事は、監督する者と監督される者という立場の違いがあるため、兼任はできれば避けるべきであるとされ、ただ、組合には組合ごとに、歴史があり事情があるはずですので、総代と理事の兼任を許すかどうかは、個々の組合で判断すべきこととされています。
 すなわち、厚生労働省が策定した「消費生活協同組合の模範定款例」の解説では、総代の選挙に関して、「総代選挙の被選挙権については、役職員を除くよう規約で明示することが望ましい。」(模範定款57ページ)と書かれていますが、模範定款では、「第○○条 総代は、総代選挙規約の定めるところにより、組合員のうちから選挙する。」との規定にとどめているからです。

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菊池捷男(弁護士)

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