会社法 決算書類の電子公告
1 株式会社に始まり、他の法人にも広がる
会社法によって、株式会社の取締役に課せられた、内部統制システムの構築義務であるが、その義務の根拠が、取締役の善管注意義務や忠実義務にある以上は、同じ善管注意義務や忠実義務を負う、あらゆる法人の理事にも、適用されてしかるべきものであり、近時、内部統制システムは、他の法人へも広がってきている。
2 暗黙知から形式知へ
一般社団法人大学監査協会は、平成25年3月11日に「大学における内部統制に関する基準」を策定(平成28年3月7日改正)した。
この中で、同法人は、「これまで大学では、業務運営が慣習等といった暗黙知の中で動いていることもままあったことと思うが、これからは、暗黙知による業務運営から、文書化された規程やルールに基づいた業務の実施という形式知に基づいた業務運営へと転換する取り組みが重要になると思われる。」と書いている。
「慣習等といった“暗黙知による業務運営"」ではなく、「文書化された規程やルールという“形式知に基づいた業務運営"」をせよ、というのである。
3 経営原則の法理による自由度
しかし、一方で、会社法は、経営原則の法理を立てて、取締役が、リスクを取る経営をすることに、一定の理解を示している。この経営原則の法理は、大学などの法人にも、当然認められなければならない。そうでなければ、内部統制システムは、経営者の個性までも殺しかねないことになるからである。
4 形式知は良識知
その意味でいうと、前述の一般社団法人大学監査協会のいう「文書化された規程やルールという“形式知"」というのは、理事の個性や主観のすべてを認めない規矩ではなく、それぞれの法人が、歴史と伝統の中で、考え出した良識知というべきものであると思われる。
その中で、法人の理事は、個性を生かしつつ、法人の運営をすることが望まれているものと思うのである。