ポレートガバナンス・コード改革が動き始めた② 代表取締役の解職をクーデターというのは、昔の話
1 親会社の取締役には、子会社の経営を監視する義務がある
福岡高裁平成24年4月13日判決は、親会社の取締役には、子会社の経営を監視する義務があるとして、子会社が、同じ商品を一定範囲の者の間で、順次売買契約を繰り返していく、いわゆるグルグル回し取引という一種の架空取引(循環取引)をしていたことを見落とし、破綻に瀕した子会社を救済するため融資するなどして親会社に損害を与えたとの理由で、親会社の取締役に対して、18億円の損害賠償を命じた一審判決を支持する判決を言い渡した。
2 取締役の忠実義務及び善管注意義務違反が根拠
この判決がなされた時点ではまだ、会社法施行規則5の「企業集団内部統制システムの構築」規定は存在していなかったが、親会社の取締役には、取締役に課された忠実義務及び善管注意義務の一内容として、子会社の経営を監視する義務があるとされたのである。
3 親子会社間に構築すべき企業集団内部統制ステムの内容
親会社の取締役については、
①子会社における業務の適正の確保のための議決権行使の方針、
②子会社との情報交換、人事交流をはじめとする子会社との連携.協力体制の確立、
③子会社を統括する部署の設置など子会社の監視体制の確立
④それに関する子会社管理規定等の制定、
⑤子会社に対する架空取引の指示など、子会社に対する不当な取引要求等を防止するための体制の確立など
また、子会社の取締役については、
①親会社との連携体制の確立、
②親会社からの不当な圧力による取引の強要、不当な指示に対する予防と対処方法の確立、
③親会社の役員等を兼務する役員等の当該子会社に関する忠実義務の確保に関する事項の決定、
④親会社の計算書類又は連結計算書類の粉飾に利用されるリスクに対する対応等の決定
などのシステム構築義務があるとされている(江頭憲治郎ほか編「会社法体系3」168ページ)。
なお、循環取引については、http://mbp-japan.com/okayama/kikuchi/column/5143/
を参照されたい。